劇場公開日 2012年1月13日

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「ドミニク・クーパーの人間モーフィング」デビルズ・ダブル ある影武者の物語 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ドミニク・クーパーの人間モーフィング

2012年1月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

この国で何をやっても許される一族の長男ウダイと、そのウダイにそっくりなために人生の歯車が狂ってしまう男の物語だ。
この二人の男をドミニク・クーパーが二役で演じるわけだが、その演じ分けが半端ではない。
なんでも自由になり、一級品を身に着け、男だろうが女だろうが跪かせることができながら、常に父の影に怯え自信のないウダイと、家族を監視下に置かれ逃げ出すこともできず、王宮の贅沢で甘美な生活にたじろぎながらも、人としての信念を曲げないタフさを持つラティフ。単に操る者と操られる者の仕草だけではない、その性格や人間性までも演じ分ける。
ラフティがウダイになり切ろうと喋り方や笑い方を練習する場面も見どころだ。もう一人の自分と、まだなり切れない中間をも演じることになる。ドミニク・クーパーの離れ業は正に人間モーフィング。
どんなに豪華な衣装を着けていようが、どんなに絶叫しようが、ラティフにはラティフらしさが残る。怪演としか言いようがない。ほかに適切な言葉が浮かばない。

原作が本人だから、どうやら生き延びたことは察しがつくが、映画の終盤はウダイの手から逃走するラティフの、理不尽な運命と死に物狂いで闘う様子が描かれる。息詰まる新たな展開に、作品が単調にならない演出の工夫がみられる。

それにしても、やりたい放題のウダイを成敗しようとするサダームが、立派な父親に見えてしまう作品だ。

マスター@だんだん