劇場公開日 2011年7月16日

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「人生を喜劇に変えるのが演劇と役者の力だ!」大鹿村騒動記 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人生を喜劇に変えるのが演劇と役者の力だ!

2011年7月24日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

鹿児島には六月燈(ろくがつどう)という一種の夏祭りのような行事がある。
特に僕の住んでた集落(大鹿村に毛の生えた程度の田舎)では六月燈で、
大人達、子ども達がそれぞれちょっとした劇を演るんですね。
小さな集会所に集落の方々が100人超集まって、その目の前で劇を披露する訳です。
某有名時代劇をモチーフに、時事ネタを絡めたり、
大人の劇ではこの映画みたくチョイと下ネタ交えたり。

だからこの映画を観てやたらと懐かしい気持ちに襲われてですね。
台詞トチって笑いが起きたり、殺陣のシーンじゃ拍手が起きたり、
そりゃこの大鹿村歌舞伎ほど本格的ではないけど、
よおく憶えてるんです。見てても演ってても賑やかで楽しかった事は。

演劇を楽しみにしてくれる人達がいる。だから、演じるのが楽しい。
役者さんが役者を続ける理由ってのは、案外そんな単純な想いからじゃないかしら。
笑いと拍手の止まない大鹿村歌舞伎を楽しみながら、そんな事を考えた。
まあ歌舞伎って正直、何を喋ってるのか僕には半分も分からないんだが(笑)、
演者の迫力と快い雰囲気のお陰で結構楽しめてしまった。

老い・過疎・職業難・その他人生の悲しみ諸々。
この映画、扱っているテーマは深刻なのに、殆ど重さを感じさせない愉快なシーンばかり。

点滴を持って踊る佐藤浩市。
冨浦智嗣と瑛太のロマンス(?)。
塩辛を嬉しそうに抱える大楠道代。
最高に滑稽な岸部一徳。
(世田谷難しいんですッ!)
馬鹿騒ぎを眺めてキュウキュウ鳴く小鹿さえ笑いを誘う。
一方で、三國連太郎の登場シーンでは人生の重さを受け止めてみせる度量も見せて見事。

そして原田芳雄。
なんてカウボーイハットとグラサンが似合うんだ!
歌舞伎のシーンも素晴らしい声と迫力!
時折見せる複雑な表情も印象的だった。

「酸いも甘いも、全部纏めて人生よ」
と言わんばかりに、歌舞伎に全部載っけて笑い飛ばすその気骨がカッコ良い。

しかし……
この駄文をチンタラ書いてる間に、原田芳雄が逝ってしまった。
ずたぼろの身体を押して試写会に参加し、
演者としての役目を最後まで果たした原田芳雄。
きっとお客の笑顔を壇上で、自分の両の眼で観たかったんじゃないかな。

そんなカッコ良すぎる貴方は、湿っぽい別れの挨拶じゃなく、
劇中同様の掛け声で送ってあげたい。

「ィヨッ、大統領ッ!!」
最高の役者魂、見せて頂きました!

<2011/7/16鑑賞>

浮遊きびなご