劇場公開日 2011年7月16日

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「大イベント・歌舞伎はギクシャクした人間関係をも呑み込んでくれる村の浄化剤」大鹿村騒動記 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大イベント・歌舞伎はギクシャクした人間関係をも呑み込んでくれる村の浄化剤

2011年7月23日
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鑑賞方法:映画館

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女房に逃げられたことも、その女房が帰ってきたことも筒抜けの小さな山村。ここにはプライベートなんてものは存在しない。
女房を連れ出した男を呪ってはみたものの、その男が村に戻ってくれば、なんだかんだいっても受け入れてしまう。ここでの人を量る基準は『村の人間かそうでないか』がいちばんなのだ。
なにはともあれ、住人が助け合っていかないと村は成り立たない。

人の女房を連れ出したバツの悪さがあっても、久しぶりの故郷に溶け込むお調子者の治(岸部一徳)、女房を寝取られても昔のように治に接してしまう善(原田芳雄)、ふたりの掛け合いは漫才のようにおもしろい。

駅ができるはずもないリニアの建設に賛成する権三(石橋蓮司)が実は土木業者で、反対する者と一緒になんか歌舞伎はできないと練習を拒んだりするくだりも、子供っぽい可笑しさとともに、村ののどかさを醸し出す。

喧嘩しても逃げ場のない村、顔を合わせないわけにはいかない小さな村。
年に一回、300年以上続けてきた村の大イベント・歌舞伎はギクシャクした人間関係をも呑み込んでくれる村の浄化剤のようだ。

歌舞伎の本番、舞台の袖で善の妻・貴子(大楠道代)が舞台に立つ善に向かって呟く「許してもらわなくてもいいから」、それに続く原田芳雄のクローズアップは、このふたりだけが共有しうる情愛が滲み出る。

三國連太郎がシベリア抑留時の話をする場面は、間の取り方といいアドリブといい、ほんとに巧い。
抑留中、同郷の友を失った老人の経験は、そのまま村の歴史を物語る。

原田芳雄さん、70年代前半、浅丘ルリ子さんと共演したTVドラマ「冬物語」での煙草を吸うあなたは渋くてカッコよくて、“大人の男”として憧れでした。
ご冥福をお祈りします。

マスター@だんだん