劇場公開日 2011年2月26日

英国王のスピーチ : 映画評論・批評

2011年2月22日更新

2011年2月26日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

2人の人生の山場がドラマチックに交錯した実話の面白さ

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人生を左右する出会いには必然性がある。吃音に悩んでいたヨーク公(のちのジョージ6世=コリン・ファース)と、医師の免許もなくパッとしない人生を送っていたスピーチ矯正師ローグ(ジェフリー・ラッシュ)の場合も例外ではない。もしこの出会いがなかったら2人の人生はもちろん、イギリスの命運も変わっていただろう。そう思わせるほど、吃音の克服と2人の人生の山場がドラマチックにクロスしている。フィクションを超えた実話の面白さに魅了されてしまった。

とにかくこの映画に出てくるエピソードはどれも面白すぎる。一番驚いたのはヨーク公の悲惨な幼年時代だ。強くて怖い父親と自由奔放な兄に挟まれ、左利きやX脚の矯正を無理強いされ、乳母にまで虐待されていたとは。そして、純愛物語として有名なエドワード8世の「王冠をかけた恋」は、わがままな兄が突然家業を放り出して自信のない弟に責任を押しつけるという、兄弟の葛藤にフォーカスされている。王室ものとして以上に、威圧的な親が息子を抑圧するファミリードラマとして面白いし、立場が違えば同じ事件でもこんなに違う様相になるというのも興味深い。

ヨーク公の苦悩をベースにした落ち着いたトーンに、ローグとの関係の変化を3段階で表現してアクセントをつけた脚本の構成も見事だ。閉じこもっていた殻から一歩踏み出すヨーク公をユーモラスに見せるトレーニングシーン。自分の運命はローグに託すしかないと決断する戴冠式のリハーサル。そして、2人の信頼関係が最高の効果を発揮するラストのラジオ放送だ。このシーンで、ローグはオーケストラの指揮者、ジョージ6世はそのタクトに導かれる演奏者のように見えて感動した。ファース、ラッシュ、そしてヘレナ・ボナム・カーターら俳優たちの素晴らしさは言うまでもない。

森山京子

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