トランスフォーマー ダークサイド・ムーン : インタビュー
製作総指揮スティーブン・スピルバーグ、監督マイケル・ベイ、視覚効果ILMが全技術を投入した「トランスフォーマー」が第3弾「トランスフォーマー ダークサイド・ムーン」(7月29日公開)で完結する。ワールド・ツアー最終地、日本に降り立ったベイは、自ら最終章を“傑作”と豪語! 自分自身を“持っている監督”と言ってはばからない稀代のヒットメーカーが、3D映像を駆使するなど、作品とともに“トランスフォーム”を繰り返し、情熱を捧げた6年間を振り返った。(取材・文・写真:鴇田 崇)
マイケル・ベイ監督インタビュー
「いい3D映画を撮れるかどうかは知識じゃない。“持っているかいないか”だよ(笑)」
マイケル・ベイが3D映画に挑戦――本作の情報が解禁された時、耳を疑った映画ファンも少なくなかった。フィルムの質感をこよなく愛するベイはスピルバーグ同様アナログ派で、3D映像はおろかデジタル撮影でさえ否定的だったからだ。ところが、周知のように巨匠ジェームズ・キャメロンから猛烈に3Dの魅力を説かれ、ベイは3Dに初めて関心を抱く。
「デジタルは決してフィルムほどよくはならないと思っているし、確かに3Dにも懐疑的だったけれど、キャメロンに誘われて『アバター』の撮影現場を何度か観たよ。その後、キャメロンとスピルバーグに説得されるような流れで、技術的なことを猛勉強した。どうやら『トランスフォーマー』のような映画を撮る僕は、3D映画向きの監督だったわけさ(笑)」
スピルバーグの言葉を借りれば“情報化社会の申し子”たるベイが、金属生命体たちがスピーディーに変形を繰り返す映像がウリの映画製作にあたって、3Dに出会うことは時間の問題だったことは想像がつく。ベイは、“驚異の映像革命”を謳ってきた本シリーズの最終章を完全なる理想形で終結させるために自身の発想を“トランスフォーム”することに決め、約1年間に及ぶ3D研究の後、驚異的な映像の構築を目指したのだ。
「60%以上の映像を3Dカメラで撮影して、20%程度の3D映像をCGで作ったよ。後は普通のカメラで撮った映像を3Dに変換したのさ。3Dは新しい技術なので、3Dカメラで撮れない複雑なシーンがまだまだたくさんあって、特に今回は屋外のロケが多かったし、アクションも多かった。空中でもたくさん3Dカメラで撮影したけれど、セットの中でコントロールしているような映画とはまったく違うので、もっとも大変な3D映画だったと思う」
3Dカメラを装着したスカイダイバーを時速240キロでシカゴのビル群の間を実際に飛ばすなど、非凡な発想の元に驚くべき映像素材を大量に獲得した。シカゴの街は善と悪に別れたロボットたちの戦争で壊滅状態となり、奥行きを追求した3D効果で、まるで戦場にいるかのような臨場感が体感できる。“「アバター」に次ぐ3D映画の成功例”との評価も聞こえるが、その秘訣をベイはこう話す。
「そもそも3Dを使いこなせる監督は一握りしかいないよ。3Dカメラを一度使ったからといって、いい3D映画が作れるということはなくて、空間の使い方や観客に体感をさせる術など、すべてを理解していないとダメだと思うね。そういうセンスを持っているか持っていないかが重要で、誰かが教えてくれるものではないよ(笑)」
早くも全世界の興行収入が、累計7億ドルを超えるメガヒットを記録中の本作。しかし、ベイは、最終章が大成功を収めた最大の理由をこう明かす。
「6年間かけて3本の『トランスフォーマー』作品を生み出してきたが、3本の中で今回の作品が一番ストーリーもいいし、ビジュアルもいい。なによりバンブルビーなどを見ていると、僕たちの子ども心を解放してくれる。とにかく楽しくて、体験する作品。童心に帰って楽しめる娯楽作なのさ」