行きずりの街 : インタビュー
仲村トオル&小西真奈美、絶大な信頼を寄せた阪本順治との強固なきずな
志水辰夫のベストセラー小説を、阪本順治監督、仲村トオル主演で映画化した「行きずりの街」が、11月20日から全国で公開される。1992年に「このミステリーがすごい!」で第1位を獲得した骨太でハードボイルドタッチの作風は、阪本監督の真骨頂。映画出演50作目、そしてデビュー25年目という節目の年に主人公・波多野を演じた仲村、辛い過去から目を背けず気丈に生きるヒロイン・雅子に扮した小西真奈美に話を聞いた。(取材・文:編集部、写真:堀弥生)
同作は、元教え子との結婚をスキャンダル扱いされ、名門女子高での教職を奪われた塾講師の主人公が、別れた妻との運命的な再会を経て、自らを追放した学園がひた隠す黒いナゾに迫る姿を描く。仲村にとっては、デビュー作「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズを世におくりだしたセントラル・アーツの黒澤満が企画・製作を手がけ、いつか一緒に仕事がしたいと思っていた阪本監督のメガホンだけに、強い思い入れを抱く作品になった。
仲村扮する波多野は、郷里の丹波篠山で塾講師をしているが、連絡が取れなくなった元教え子・ゆかりの行方を追って、12年ぶりに東京の地を踏む。失踪の背後に事件の臭いを感じ取り、その果てに、かつての妻が切り盛りするバーへとたどり着く。きっかけが何にしろ、深く愛し合った元夫婦が長い別離を経て再会するこのシチュエーションを、2人はどう感じ取ったのか。
一般的に男は“未練の生き物”と言われているなか、仲村は「行方不明になった教え子を探してほしいって言われたときから『やっと東京へ行く理由ができた』と思ったんじゃないでしょうか。すごくうれしいという感情もあっただろうし、そういう大義名分がなければ行けなかったと思うんですよね」と話す。
クランクイン前に、阪本監督と「もしも、かつての恋人を見かけたら声をかけるか?」という議題で話し合ったという。「監督は『幸せそうだったら声をかけずに立ち去るだろう』と言っていて、僕もそう思う。逆の場合、付け入る隙があるから、声をかけるんじゃないかという気がします。自分が幸せにするチャンスがあるのかもしれないっていう。どちらにせよ、波多野が東京へ行った理由も、店へ行った理由も、ずるいなあと思いますね。ただ、共感まではいかないけれど、同情するくらいの気持ちはありますね」
一方の小西は、「私はその状況をすごくうれしいと思うんです。もちろん戸惑いもあるけれど、もう学生ではないので、大人なりのいろんな思いもめぐるんじゃないでしょうか」と笑みをたたえる。そして、「ただ、絶対的にずっと思っていた人だし、すがすがしく『じゃあ』って全てが良い方向で終わった相手ではないですよね。もう1度会うことで、相手に対して言い尽くせなかったこと、傷を負わせてしまったこと、後悔していることを埋めるチャンスがもらえた気がします」と説明した。