劇場公開日 2010年6月5日

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「すごくイイ映画なんだけど」孤高のメス かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0すごくイイ映画なんだけど

2010年7月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

拙ブログより抜粋で。
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 演出的にはリアルに再現された手術シーンが目を見張る。変に隠すことなく、開口部をはっきりと見せる勇気ある姿勢にも驚かされるが、と同時に、神秘的にすら感じる医療行為の“美しさ”にまで迫った演出は、この手の医療モノの作品ではあまり感じたことのない感動で、白眉だった。
 脚本もよく練られており、往年の西部劇を彷彿とさせるエンターテイメントの王道をゆくさすらい医師、必要充分な描写の中でキャラ立ちした登場人物たち、わかりやすく提示される様々な医療問題、ときにユーモアも交えた的確な伏線とその回収、と、どこから斬っても手堅い良作に仕上がっていると言えよう。
 ただ、好みによるのだろうが、ちょっとケレン味が足りない気がしないでもない。

 とにかく堤真一演じる当麻のキャラクターができすぎな感じで、憧れるほど立派なヒーローではあるが人物造形的に完璧な人すぎて人間臭さには欠く。
 そういう意味では敵役となる権威主義者のダメ医師・野本(生瀬勝久)の方が、ひどい奴だが人間味はあると感じてしまうくらい。
 しかしこの野本にしてもあまりに絵に描いたような悪役で、人の命を預かるという微妙な問題を扱った本作では、こういう勧善懲悪的な対立構造は安易すぎないか。
 さらにこの対立構造も、野本が影でコソコソ悪口を言っているだけという印象しかなく、直接対決するわけではない。これも映画的に難しくなりそうなことは避けたという安易さを感じてしまう。
 良くできた脚本だが、巧いがゆえに難しいことからは上手に目を反らしたという気がするのよ。
 逆に言えば、難しい医療問題をわかりやすいエンターテイメント作品として仕上げたという点で評価できるのだが。

かみぃ