劇場公開日 2009年1月10日

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「圧倒的な映像美に加えて、人間の愚かさをさりげなく観客に痛みとしてを感じさせることで、いつまでも記憶に残る作品。」きつねと私の12か月 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0圧倒的な映像美に加えて、人間の愚かさをさりげなく観客に痛みとしてを感じさせることで、いつまでも記憶に残る作品。

2009年1月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 リュック・ジャケ監督作品だけに、ドキュメンタリーに近い作品。何しろ登場人物は、少女リラとあとラストに少し大人になったリラとその息子が出てくるくらいで、ほとんどが野生のキツネが主役。
 警戒心が強いキツネの生態に密着した撮影をしているところがすごいです。
 巣ごもりして子育てしているところや、山猫に追われて逃げ込んだ巣穴で一安心している姿をタイムリーに撮影しているのです。どうやって逃げ込む先を見越してカメラをセットしたのでしょうね。
 さらに、しつこくキツネを追いかけるリラの執念が実って、何とキツネ一家とリラは、すっかりお友達になってしまうのです。
 リラが体を触れようとしてもキツネ一家の面々は逃げようとしないしないで、リラにじゃれつきます。それだけでなく、リラが道に迷って野宿してしまったときなど一晩ずっと寄り添っていたのです。まるでペットの犬みたいに。何とも信じがたい映像でした。
 でもそんな関係になるまでには、リラも相当待ちぼうけを喰わされました。何しろキツネという生き物は、気まぐれなんです。リラのそばにプイと現れて、しばらく彼女のご主人様気取りであちこち「先導」したあげく、突如消えてしまうのです。この繰り返し。
 対するリラも結構強引なところもありました。
 餌でキツネをおびき寄せるられることを覚えたリラは、何とたこ糸の先に餌をくくりつけ、文字通り『キツネ釣り』を試すのでした。
 見事にキツネは釣られてしまうのですが、そこは運動能力の高いキツネの身上。あっという間に糸を引きちぎってトンヅラします。
 一生懸命キツネを釣ろうとするリラの奮闘ぶりが可笑しかったです。

 あと熊と遭遇するシーンやオオカミの群れに囲まれたキツネを助けるために、リラがオオカミと対峙するシーンでは、どうやって安全に撮影したのか驚きました。

 『アース』と比べてもドラマ性がいまいち弱く単調気味と感じました。ただキツネはとても可愛く、感情移入してしまいます。またジャケ監督ならではの映像美は随所に散りばめられていました。
 特に冒頭の秋のシーンでは、山一面が紅葉でキツネ色に染まります。空もまた夕日でキツネ色に。そして、キツネの毛も夕日の逆行を受けてキツネ色に輝いていました。
 キツネ色づくしのオープニングでしたね。

 淡々としたドラマながら、ラストに母親になったリラが息子に語る「好きになると所有しようとしてしまう」というメッセージにはジンときましたね。
 彼女自身が、キツネを身近に置こうと拘束したため、辛い別れを招いてしまいました。これって人間界でもよくあることですね。トリモチのような愛情なんて、苦しみにしか過ぎないでしょう。
 ジャケ監督は、人間の愚かさをさりげなく観客に痛みを感じさせることで、いつまでも記憶に残る作品に仕立て上げました。映画のように是非親子で見て語り合ってほしい作品です。

 さて、本編の映像で、キツネが丸くなるというのは、FIREFOXのロゴ上の表現だけと思い込んでいました。しかし、餌をとるときキツネは小躍りして、体を丸くしジャンプするようです。あなたもブラウザーが「キツネ党」なら、ぜひ生身のキツネの生態をこの作品で触れてほしいものです。

流山の小地蔵