劇場公開日 2009年9月19日

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カムイ外伝 : インタビュー

2009年9月16日更新

崔洋一監督 インタビュー パート2

「自分の出自や帰属性は、この映画とは無縁」という崔監督。純粋な娯楽アクション時代劇を目指したという
「自分の出自や帰属性は、この映画とは無縁」という崔監督。純粋な娯楽アクション時代劇を目指したという

――「カムイ外伝」は、被差別の青年忍者が自由を求めて闘い続けるというのがストーリーの骨格ですが、在日朝鮮人の映画監督として、被差別ということに関して意識して撮ったということはありますか?

「自分の出自や帰属性は、この映画とは無縁だと思いますね。僕もいわゆる在日朝鮮・韓国人が主人公の作品を作ってないことはないけど、僕の出自が僕の作る映画を形作っていくという考え方は間違っていると思います。僕に映画を作らせる源泉、エナジーは、ほとんどが僕の頭の中にある妄想ですよ。ただ、ある種、その世界を知らない人が作るよりは、実感がある分、リアリティのある映像が出来上がるでしょう。そういった物語を好んで作るときは生活感をもって、経験として注入された知識が役に立つとは思います。でも、だからといって、映画を作る上で同じ被差別者として『カムイ外伝』に近づいていったということは無いですね。

後からCG処理される エアー鮫と格闘する崔監督
後からCG処理される エアー鮫と格闘する崔監督

僕はよく言うんだけど、自分が何かを書くときに、いちいち国家を背負って書きますか? 普通は書かないでしょう? 自らのアイデンティティーに関して意識的になりやすい外国に滞在していても、僕は変わらないと思います。差別、被差別が激しい瞬間に自分の身が置かれているときでも、そうでないときも、同じような意識を持つことは、その人にとっての、とても素晴らしい在り方だと思います。したがって、すべての排他的な思想に反対できるわけですよ」

――師匠筋にあたる大島渚監督が白土さん原作の「忍者武芸帳」(67)を撮ってますが、どこか気にかけて、今回の「カムイ外伝」を撮ったということはありますか?

「それは全くないですね。もちろん『忍者武芸帳』もリアルタイムで見てます。そして、何故大島さんが、ある種のおおらかなソーシャリストである白土三平の『忍者武芸帳』を題材にしたかという理由も知ってます。ただ、それよりも何よりも僕は原作である『忍者武芸帳 影丸伝』の愛読者のひとりでしたからね。その当時、大島さんは崔洋一のことなんか当然知らなかっただろうけど、僕は大島さんの一番の難敵のひとりだったと思いますよ。原作の愛読者だし、僕なりの影丸像が出来上がってますからね。で、映画を見て、明らかにこれは違うなと感じました。これは大島渚の影丸だって思いました。大島さんは白土さんが描くような民衆の力に屈して変革があるということに関しては非常に疑義を持っているとも思いました。それは今でも変わりません。だから、今回同じ白土三平原作の作品を手掛けるにあたっては、大島さんからの影響はほとんど無かったといっていいと思います」

――今までの崔監督の作品のほとんどに通底しているのが、いわゆる「リアリズム」ですが、今回は割と現実離れしたアクロバティックなアクションもとり入れてますね。

松山ケンイチも続編に意欲
松山ケンイチも続編に意欲

「部分的にはね。だけど忍者映画なんだから、飛んだり跳ねたりのアクションを取り入れざるを得ないわけで、そういったアクションを僕の中でどう面白く解釈するかということですよね。だから、すごく面白がって撮りましたよ。そういった意味で、白土さんの原作にあるアクションのイメージにはとてもインスパイアされました。白土さんに会ったとき、あの『変移抜刀霞斬り』『十文字霞返し』という術の本質はなんですか?って聞いたんです。そしたら、『そうね、色々検証したんだけど、結局は思いつきかな(笑)』なんて言われて、『やられた、このオヤジ!』って思うわけですよ(笑)。でもそれでいいんですよね。ワイヤー、VFXを含めたアクション描写に関して、僕としては今の日本映画界で出来ることはすべてやったという自負はあります。爽快とか清々しいとか、そういった映画ではないかもしれないけど、ある快活さ、饒舌さ、寡黙な部分もあって、作っていてとても楽しかった。殺陣、VFX、ワイヤーもこれほど多用するのは初めてだったし、すべてひっくるめて面白かったよね」

――すでに続編を作りたいと公言しているそうですね。

「もちろん考えているんですけど、そのためにはこの『カムイ外伝』がヒットしないことにはね。ケンイチはやる気でいるから、僕もやる気でいるよ。ケンイチは肉体的に本当に辛かっただろうけど、僕の前で『2部、3部へ向かって行きましょう』と表明してくれました。素地としてはエピソードはまだたくさんあるんだけど、最終的には『外伝』から『正伝』つまり『カムイ伝』の方にいきたいという思いがありますね」

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