劇場公開日 1981年2月14日

「男のドリームとジェラシーをモノクロ映像とマスカーニの音楽で抒情化したスコセッシ監督の映像詩」レイジング・ブル Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0男のドリームとジェラシーをモノクロ映像とマスカーニの音楽で抒情化したスコセッシ監督の映像詩

2022年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

マーティン・スコシージが演出した、破滅型ボクサーの成れの果ての映像詩。ロバート・デ・ニーロの役者魂がストレートに感じられる闘う男の熱さと敗北の無様な姿が強烈である。この演出と演技が一つに溶け合って見事な映画となる。描かれたものは男の敗北、それも生きながらえて人生に負けた男の挑戦者のむき出しの生き様。ここには今日の社会性とは無縁の、勝負に拘る男の性があるだけ。「アリスの恋」が自立して生きて行く女性の困難さを描いたのに対して、この作品は本能だけで生きて行く男性の孤独を見詰めた男のための映画だった。物語は非常にシンプルで、モノクロ映像の美しさが際立ち、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティーカ』の間奏曲と渾然一体とした演出も素晴らしい。この叙情的な曲が、ボクサーを主人公にしたドラマのメインテーマ曲として生かされている。
ドラマツルギーと云うより、ジェイク・ラモッタの見たスローモーションの残像が音楽で抒情化された、男のドリームとジェラシー。

  1981年 2月18日  日比谷映画劇場

Gustav