劇場公開日 1976年7月3日

「疑いも無く世界最高の戦争映画」ミッドウェイ(1976) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0疑いも無く世界最高の戦争映画

2019年1月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

多量の実際の戦争記録映像と76年当時に撮影された映画を見事にシームレスにつないであり、観ていても全く違和感がない
無論、セットでの合成シーンもチープさは微塵も無く厳しくチェックされた考証の確かさも素晴らしい
よって、戦闘シーンは本物の臨場感に溢れている
もちろん軍事的な考証で怪しいところは皆無だ

また冒頭のドーリットル空襲の爆撃機の空母発艦シーンは東京上空30秒からの流用
ミッドウェイに片足着陸する爆撃機のシーンはトラ!トラ!トラ!からの流用
日本艦隊のシーンは恐らく日本の戦記映画からのものだろう
これらも的確かつ効果的に挿入されているので、これもまた違和感無くリアリティーを一層高めている

当然米軍側の視点で物語は進行するが、日本軍側のシーンも多い
そして誠実に公平に描かれている
またその日本側シーンはまるで日本人監督が撮ったかのように日本人が観て違和感が無いレベルなのが恐れ入った
山本司令長官は三船敏郎が演じており、正にそうあって欲しい山本司令長官のイメージを体現している
その他の主要な日本人役、日本側の水兵などのエキストラは日系米国人とのことだが、かれらの顔付き、立ち振舞い、服装などもまったく日本人そのものの雰囲気で日本人として違和感が全く無い

米軍側の主要人物も主人公役のチャールトンヘストンはじめ有名俳優がずらりで画面も引き締まっている
また主人公の息子、その日本人の恋人とのドラマシーンも映画に深みを与えている

音楽はスターウォーズで人気音楽家となる、ジョンウィリアムズが担当しており、現代の我々にも耳に馴染む良い出来だ

音響もサラウンドが出始めに取り組んだ作品でありこれも迫力と臨場感ある戦闘シーンを楽しめる

そして、肝心の海戦シーンの迫力はものすごいものがある
まるでベビー級のボクシング試合の世界チャンピオン戦が恐ろしいくらいの打ち合いになったのをリングサイドで見ているかの様に、ドキドキと動悸がはげしく成るほどのものだ
もちろん海戦の推移を詳しく知っていてもそうなのだ

ラストシーンでニミッツ提督が我々は単に幸運なだけだったかも知れないと語らせる

映画とは離れるが、幸運とは問題を解決するかも知れない切っ掛けをどれだけ沢山集める努力をしていたかだそうだ
つまり幸運の確率は誰にも同じで、サイコロを振る回数を増やす努力をより多くした者が、結果的に幸運を手にするということ
それを無意識に努力している人間が、幸運な人間の正体だという

米軍側は確かにそうであり日本軍はそうでなかった
自ずから幸運の女神はそちらに引き寄せられた訳だ

さて、日本人は果たしてそれを教訓に出来ていたろうか?
福島原発事故の数年前に大津波が原発に甚大なダメージを与える危険性があるとの報告を受けながら、本作での草鹿参謀の様に希望的観測で受け流していたのであった
結果、我々はある意味ミッドウェイの大敗以上の敗北をまたも被っていたのだ
戦前の日本海軍、現代の東電
日本のトップエリートの集団はこの弱点を克服できてはいないのが明らかになったわけだ
次の世代は果たして克服出来るのだろうか?

このような考察までが胸中に去来する、戦争映画としてパーフェクトな作品としてお薦めしたい

但しこれ程の名作なのに、日本語字幕が頂けない
軍事知識の無い翻訳者が作ったものらしく意味が通らない軍事用語の訳がとても多く残念
渕田飛行隊長を司令官、雷撃機乗りを魚雷艇乗りと訳されては困惑してしまう
空母蒼龍の艦名を違う漢字で表記されては、失礼のレベルだ
三船敏郎さんがよりリアリティーがでるように山本提督の制服を日本で作ってまで撮影の為米国に向かった姿勢とは大違いだ
日本語字幕製作陣とこれをよしとした配給会社の猛省を望む
機会があれば是非直して頂きたい

あき240