劇場公開日 1956年10月5日

「人生の無常」ヘッドライト 細谷久行さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人生の無常

2018年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

単純

人生の労苦と悲哀にうちひしがれ、苦労の辛酸を嘗め尽くし、それを額に刻んで生きてきた役柄を演じさせたらジャン・ギャバンの右に出る者はいないのではないか。ふとした演技の瞬間にそれが何気なく、ごく自然に表れる。勿論、彼の演技はそれにとどまらず、他のどのような役を演じてもそれを見事にこなしてしまう。そこがジャン・ギャバンのすごいところだと思う。この作品では初老のトラック運転手として仕事をしてゆくうちに、また冷たく暗い家庭に生きていくことによって、鬱積した不満や苦悩から、今流に言へばブラックドライブインで、けなげに働くクロチルド ( フランソワーズ・アルヌール ) と恋仲になるのは必然な成り行きあったかもしれない。それでは何故クロはジャン ( ジャン・ギャバン ) に魅かれたか、思うにジャンの所作に人生の年輪を見て取ったからではないか。細かいストーリーは省く。クロがジャンに自分の妊娠を結果的に伝えられなかったことは、彼女の内向きなやさしい性格のためではなかったか。これらの事実はやがて悲劇的 結末へと収斂されてゆく。まだ充分な説明になっていないが、最後にジャンの相棒ピエロ ( ピエール・モンディ ) やジャンに再就職を斡旋した友人達がこの作品の脇を固めている。

細谷久行