戦場よさらば

解説

戦争文学として名高いアーネスト・ヘミングウェイ作の同名の小説を映画化したもので、「夜の看護婦」「世界とその男」のオリヴァー・H・P・ギャレットが「マタ・ハリ」「明暗二人女」のベンジャミン・グレイザーと共同脚色し、「バッド・ガール」「ヤング・アメリカ」のフランク・ボーゼージが監督に当り、「地下の雷鳴」「恋愛百科全書」のチャールズ・ラングが撮影を担当している。主演者は「マデロンの悲劇」ヘレン・ヘイズ、「百万円貰ったら」「悪魔と深海」のゲイリー・クーパーで「モロッコ」「ニュウ・ムーン」「犯罪都市(1931)」のアドルフ・マンジュウを始め、「巴里の丑満時」のジャック・ラルー、メアリー・フィリップス、ブランシュ・フレデリシ、メアリー・フォーブス、ギルバート・エメリー等が助演している。

1932年製作/アメリカ
原題:A Farewell to Arms

ストーリー

欧州大戦未だ酣わの頃チロルの山中にオーストリア軍と対峙しているイタリア軍の衛生部隊にフレデリック・ヘンリー中尉という若いアメリカ人が居た。彼は評判の乱暴者で、酒飲みの上に女好きだった。イタリア人の軍医リナルディ少佐もヘンリー中尉に劣らない酒豪で女好きだったので、二人は意気相投じて親しい仲だった。ある日中尉は戦線を巡視して帰営するとリナルディは英国の看護婦が大勢来ると言ってはしゃいでいた。というよりは看護婦の一人に彼の意中の人があったからである。少佐が是非紹介したいというのを中尉は断って歓楽の巷に赴いた。その夜墺軍の空襲があって、中尉は美しい看護婦と知合った。翌晩の将校の宴会で中尉は少佐からキャザリン・バークレイ嬢に紹介された。彼女こそ前夜の看護婦だった。中尉と彼女は庭園で語り合った。恋し合った。翌日は中尉は戦線へ赴いた。キャザリンは少佐の嫉妬のためミラノの病院へ転勤させられた。戦場で中尉は頭と脚に重傷を負った。少佐は取敢えず手当を加えてから、自分の軍人らしくない嫉妬を恥じて中尉をミラノの病院へ送った。中尉はキャザリンの看護を受けて快癒した。だが快癒した時には2人は別れなければならなかった。中尉を戦線へ見送った彼女は秘やかにスイスのブリッサゴへ赴いた。彼女はそこで身二つになるつもりだった。彼女との恋はヘンリー中尉の性格を一変させた。中尉は酒色を顧みない。少佐はこれを喜ばなかった。キャザリンから中尉への手紙も握りつぶした。中尉がミラノ宛に出した手紙は返送されて来た。中尉は身も世もあらぬ思いで、ミラノへ彼女を探しに赴いた。しかし中尉とキャザリン仲を嫉妬している看護婦たちはキャザリンの居所を知らせない。彼が知り得たのはキャザリンが妊娠しているということだけだった。リナルディ少佐は中尉に遭い、中尉が真剣にキャザリンを愛していることを知るや、手紙で知った彼女の居所を教えた。中尉は闇の夜に雨を冒して一人コモ湖を漕ぎ渡った。ブリッサゴの病院を訪れるとキャザリンと彼の愛の結晶は死して生れ、キャザリンも手術の結果が思わしくなく、愛人の手を執りながら果敢なくもこの世を去ったのである。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第6回 アカデミー賞(1934年)

受賞

撮影賞 チャールズ・ラング
音響録音賞  

ノミネート

作品賞  
美術賞  
詳細情報を表示

映画レビュー

4.0良い演出で充分楽しめました

2019年9月26日
Androidアプリから投稿

DVDには「武器よさらば」となっています
日本公開時の名前が「戦場よさらば」です
原作はヘミングウェイの名作です

1918年の第一次世界大戦の終戦から15年後の1932年末の公開で、日本はその翌年夏の公開
原作は映画化の3年前にベストセラーになっています

この内容で戦前の日本でも公開できたのですね
日本で公開された昭和8年頃はまだ平常だったのこもしれません
4年後の支那事変以降は戦時体制となって、最早本作のような、愛を貫いて将校が軍を脱走するなんて映画はもってのほかで公開できなかったでしょう

お話はほぼ原作どおりです
従軍看護婦と軍医療部隊の将校との悲恋物語です

映像演出が大変優れています
序盤の防空壕での、パンプスを彼女の足に履かせるシーンはシンデレラのモチーフで、運命の出会いであると一目でわかるようにしています

終盤の死の床での結婚式は特に名シーンです
ベッドに横たわる彼女にほほ寄せて結婚の永遠の誓いを互いに述べ終わると共にこときれ、いつしか夜は開け、終戦を祝う鐘は二人の結婚を祝う教会の鐘のように鳴り響きます
そして晴れ渡った空に受けて鳩が幾羽も飛び立っていくのです

今日の目からすればちょっと臭いのではと思うかも知れませんが、このようなスタンダードな直球の演出はこの時代に完成されたものですから、当時の観客に取っては初めて観る感動的な演出なわけです
さぞかし涙を流して印象に残ったことと思います
21世紀のすれた観客でも素直に感動できるものです

ゲイリー・クーパーが愛に必死になる姿はなかなか他の作品にはないものです

190センチもあるゲイリー・クーパーに対して
ヒロインのヘレン・ヘイズは大変に小柄で身長差が30センチはありそうです
キスもクーパーが屈み込んで彼女も真上を向くような姿勢になり大変そうです
監督が敢えてバランスを欠くほど背の低い彼女を配役したのは、それによる彼女のか弱さ、可憐さを強調するためですが、劇中で主人公が彼女を探す時に同じ看護婦の制服ばかりで背の低い看護婦を彼女ではないかと覗き込んでまわるシーンでこの身長差が見事に活きていました

撮影も当時にしては陰影や中間色の表現も良く、特に戦場表現は効果的でした
なるほど撮影部門アカデミー賞を受賞しています

1957年のリメイクも観て観たくなりました

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