劇場公開日 1956年11月22日

「マリリン・モンローという着ぐるみ」バス停留所 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0マリリン・モンローという着ぐるみ

2019年8月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ちょっと昔、新宿歌舞伎町の風林会館の多国籍キャバクラに入った
ついた女性は白人の、金髪でこそないがマリリン・モンローのような超グラマーな女性だった
しかし彼女は見た目とは違って、まるで吹き替えの洋画を観るかの様にとても流暢な日本語を話した

「この外人の外見は着ぐるみと思って下さい
中身は普通の日本人なんです
両親はスペイン人ですが、日本で生まれて日本の公立の幼稚園や学校で日本人の友だちと一緒に育ちました
梅干し茶漬け食べて、風呂に入って、あ~幸せと普通に思うひとなんです
だから普通の日本の女の子が隣に座っていると思って下さい」
そう青い瞳の彼女は話した

その話を本作を観て思い出した
マリリン・モンローも同じだと
彼女の抜群のセックスアピールを持つ肉体は着ぐるみなんだと
内側にいるのは真面目な本格派の女優を目指して努力している女性ノーマ・ジーン
彼女はその恵まれた外見を武器にして女優のチャンスを掴めた
そして逆に。その外見は本当の彼女の性格とのギャップで彼女自身を苦しめている

頭の悪い金髪女性のイメージから脱皮しようと、マーロン・ブランドなどそうそうたる俳優達がこぞって学んだメソッド演技法を身に付けて復帰したのにも関わらず本作の役はこの通り同じであった
確かに彼女の表情、仕草、目線は今までの作品からは明らかに変わって優れたものになった

しかし、それは誰からも求められていなかった
監督からも、映画会社からも、そして観客からも
無駄に名演技なのだ

本作を撮り終えた彼女の絶望はどれ程のものだったろう
恋愛アパートや結婚協奏曲での演技の様に開き直って徹底的に頭の悪い金髪女性を適当にこなした方が遥かに面白い映画になったはずだが、彼女は真面目過ぎたのだ

超絶な美女に生まれてしまった女性の孤独と苦しみを感じた

あき240