劇場公開日 2021年10月17日

  • 予告編を見る

「逞しさと危険性」トラベラー あまねさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0逞しさと危険性

2021年10月14日
Androidアプリから投稿

楽しい

知的

特別な環境にあるわけではない一人のこどもの、一つのエピソードを映画にしているだけだけれど、シンプルながらユニークだし考えさせられる面もあり、忘れられない映画になるかもしれない。

とても丁寧に描いてあるので、観ているうちにこの子の心理に没頭してしまう。
「そんなことしたらヤバイよ」と言ってやりたい気持ちは最後まで付きまとうけど、「がんばるね、なかなかやるじゃん」という応援したいような気持ちもいつのまにか芽生えてしまう。

憧れていることをどうしてもやってみたいという気持ちや秘密の冒険をしたい気持ちは自分のこども時代にも覚えがあるので共感してしまう面もある。それに、彼は何しろホントによく粘って、なかなか頑張る。だから、つい「成功を祈る」的な気分になってしまう。

この子は欲求がとても強い。大人になって犯罪に手を染めかねないかと少し心配にはなる。と、同時に凄く頭のいいビッグな成功をおさめる大人になるんのでは?という可能性も感じる。

逞しさと危険は紙一重だなぁ、と。

無意識に子供のことに無頓着になっていた母親と、子どもに口出しをしないと決めているらしい父親(この父親はもしかしてとても思慮深い?またはその反対?)という家庭環境は、この子の人生の可能性を限りなく広げてるように見える。
『無頓着』がもたらすものは悪いことばかりではない…

映画の最後は、反省や仕出かした事の後始末への恐怖の夢でおわるけれど、それはどうなんだろう、この映画がもたらす社会への影響を考慮したのか…。
この子を<危険>に陥る可能性から守り、好ましい方向に導く何かが必要なのはわかるけれど、教訓的に終わるのは少し残念で、もう少し違う形だと面白かったのにな、とチラリとおもう。
かといって、具体案は思い浮かばないけど…

あま・おと