劇場公開日 1989年2月18日

「暴力で支配する。そんな思いと行為が世界から消えますように。」告発の行方 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5暴力で支配する。そんな思いと行為が世界から消えますように。

2021年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

知的

愛の愛撫は、お互いの意思と気持ちを尊重し、確かめ合う、思いやりに満ちた行為のはずだ。

けれども、そんなことを忘れて、人をおもちゃのように扱う人々がいる。
 力の誇示。無理やりの行為。
 そんなの、傍から見れば、その力を誇示する人のコンプレックス(本当は”力”がないことにおびえている)の裏返しにしか見えないのに。
 心が成熟した人は、相手に思いやりを示せる人。思いやりを示すためには、心に体力がいる。
 心の体力がない人ほど、暴力や暴言を振り回して自分が強くなったつもりになる。傍からは”ジャイアン”≒ただのどうしようもないがきっちょにしか見えないのに。否、ジャイアンだって、周りに思いやりを示す。思いやりを示せない暴力男は小学生以下ってことか。

サラが挑発したからいけないという人がいる。
挑発されたんなら、ちゃんと口説いてものにしろよ。
それができないから、力づくなんだろ。
そそられたからレイプするって、自分のちっささを相手のせいにする、責任転嫁。卑怯極まりない。

  知人の高校生が悩んでいたっけ。彼女がデートの度にキャミソールを着てきて、似合っていてかわいくてまぶしくてうれしいのだけれど、衝動が沸き上がってきて困る。なんて言って服を変えてもらうか。
  高校生でさえ、そそられても、衝動に身を任せない方法を考えるのに。

しかも、それをショーのように楽しむ男達。
 誰も助けに動かないことも衝撃だけれども、それよりも、”赤信号みんなで渡れば怖くない”的に、理性を吹っ飛ばせる感覚が信じられなかった。
 リンチ・いじめの構造。だんだんと過熱していく。

そんなわかりきった犯罪のはずなのに、裁判では勝ち目なしと司法取引なってしまう。罪状には納得いかないけれど、とりあえず、無罪になりそうな輩を、無罪ではないという”勝利”を勝ち取ったと検事は”力を尽くした”と思っていた(被害者に寄り添っているつもりの上から目線)。

けれど…。
 ここまでは、目の前で起こっていることがあまりにもショックで、目をそらしたくなるけれど、フォスターさんの圧倒的演技に引っ張られる。
 ここからは、やはりフォスターさんの演技に切なく胸が締め付けられつつ、この後の展開がどうなるのかも含めて、ハラハラドキドキしてしまう。
 そして、告発の行方は如何に。

とはいえ、この裁判の結末は協力者が声をあげてくれたからこそ。もし、そういう”勇気”を誰もが封じ込めていたらと考えると恐ろしい。

カップルで観て、感想を交わしてほしい。
 そうしたら、パートナーが、相手の気持ちを踏みにじって自分の気持ち・衝動を押し付けてくる奴か、相手の人間性を尊重しながら、その場にあった行動がとれる人か、わかるだろう。
 実はDV男だったなんていう男との結婚を回避できるかもしれない。

こんな被害にあわないように防御しなければならない世の中でなく、お互いの心を大切にしながら愛をかわせる日が来ますように。
こんな被害がなくなれば、痴漢の冤罪におびえる日もなくなるんだから。

とみいじょん