劇場公開日 1961年4月20日

「人間味」エルマー・ガントリー 魅せられた男 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0人間味

2020年7月11日
PCから投稿

バートランカスター。監督に好かれ名画に恵まれた人でした。地上より永遠にに出ていますし、フランケンハイマーやアルドリッチの男臭さを体現しました。かと思えばヴィスコンティにも招聘されました。

美男といえば美男ですが、線は太い人です。野太い。お金持ちでもありますが、貧しさも知っています。何でも対処できる甲斐性があり、善人でも悪人の知り合いがいる気配です。鷹揚で生活力があり、都市の渡世も、孤島のサバイバルもできます。見上げるほどの偉丈夫で粗野ですが、思いやりがあり賢明でもあります。陽気で気さくで、友人知人が大勢、妻もいますが愛人も囲っています。腕力があり、人に頼られ、積極的に人助けもします。という感じです。

じっさい何でも演じました。
軍人もインディアンもガンマンも。囚人や貴族や老人にもなりました。
ここでは流浪のセールスマンでした。口から先にうまれたごとくによくしゃべります。その日暮らしですが人たらしで直向きなところもあります。ジョークを飛ばすと自分も溜まらず笑います。そのとき大きな体躯を仰向きます。デカい男が明解な大声と抑揚で語り笑いながら、身体を躍動させます。
バートランカスターの出演映画を見ているとスクリーン越しとはいえバートランカスターの人間性が伝わってきます。エルマーガントリーもそうでした。

146分で叙事詩のように天と地を駆け巡ります。ドラマチックかつエモーショナルです。文化人が自己映画ベストをやるとかならず市民ケーンですが、私のばあいそこにエルマーガントリーが来ると思います。

遺作となったフィールドオブドリームズでランカスターの演じるMoonlight Grahamが跨いだら戻れないラインを跨ぐシーンがあります。そのとき、物語内の喫緊の状況と同時に、バートランカスターの役者人生が走馬灯のごとく巡るのです。私にとってあれは二重の涙でした。

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津次郎