劇場公開日 1967年7月15日

「ドキュメンタリー映画公開記念。今観るべきオードリー映画はこれ」いつも2人で 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ドキュメンタリー映画公開記念。今観るべきオードリー映画はこれ

2022年4月29日
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近く公開のドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』は、俳優オードリーの魅力以上に、人間としてどう生きたかにより比重が置かれている。そこで、オードリー・ファンでもある筆者があえてプッシュしたいのが、彼女のファッションアイコンとしての魅力と演技力を存分に楽しむことができる1967年製作の『いつも2人で』だ。

12年間に及ぶ夫婦間の機微を6つの旅を頻繁に前後しながら綴る物語は、出会った時の夢溢れる若々しさ、夫が建築家として徐々に成功を手に入れているのに反比例して、冷え切っていく夫婦関係、双方の浮気、復縁を、スタンリー・ドーネンの洒落た演出と、オードリーとアルバート・フィニーによる抜群の掛け合いで魅せていく。特に、オードリーが目まぐるしく前後する時間軸の中で、感情の変化を繊細に演じて、演技力に関してキャリア最高の領域に達している。もしも同年、『暗くなるまで待って』が公開されなければ、こっちでオスカー候補入りしただろうと言われているほどだ。

そして、本作でジバンシィと訣別したオードリーは、ブティックで売られていたプレタポルテを時代毎、場面毎に着替えて、服で時間を表現している。ファッションが案内人なのだ。特に、クライマックス近くのパーティシーンで登場する、当時売り出し中だったパコ・ラバンヌのメタリックドレスは、その輝きがオードリーの顔に反射して、まるでライティングの役目を果たしているかのようだ。

すでに公開から半世紀以上が経過しているのに、心にも、目にもビリビリ響くコミカルで、辛辣で、おしゃれなオードリー映画の隠れた傑作を、この機会に是非。

清藤秀人