劇場公開日 2000年7月1日

「女性の魅力を引き出す、チャンイーモウの本領が発揮された作品」あの子を探して wutangさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0女性の魅力を引き出す、チャンイーモウの本領が発揮された作品

2023年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

主人公の女の子の魅力を最大限に引き出しているのはチャンイーモウの本領発揮と言えるそれで、さすがの一言。常にムキになって課題に立ち向かう頑固な性格がガッチリめに描かれている。

映像美もまたチャンイーモウならでは。気が強くひたむきで生意気な主人公が必死で全力疾走する姿と、90年代とはとても思えないような中国の田舎の風景、というマッチングが印象的に何度も現れたが、そのどれもが同様に美しかった。

ただ、純朴さを描くが故にストーリーがシンプル(悪く言えば陳腐)であり、かつ「初恋のきた道」や「サンザシ」のような強力なスペクタクルも無く、動画というよりは美しいシーンをいくつか並べるためのストーリーのように感じてしまった。

主人公の必死さの動機が、金のためから生徒のために移り変わっていく状況説明が、テレビ番組側の美談に仕立て上げたいという意図にきっかけを得ていることもあって、なんか棚ぼたで得たものに浮かれてるようにも捉えられてしまい、ラストでいまひとつ素直に感動できなかった。

それでも、子供たちの笑顔や扱いづらさ、それに立ち向かう主人公の力強い姿が描ききれているだけでも十分良作だと思わせてくれるのが、チャンイーモウならではの演出力なのかもしれない。

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wutang