劇場公開日 1960年11月8日

武器なき斗い(1960)のレビュー・感想・評価

全1件を表示

5.0普通選挙法と抱き合わせの形で成り立った治安維持法

2019年1月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 普通選挙法と抱き合わせの形で成り立った治安維持法。党の演説のみならず性教育の講座などには必ず憲兵が立会い、「中止!」の号令で打ち切られてしまう。戦前の殺伐とした世でありながら、性教育のシーンは和やかでユニーク。wikiを紐解いてみると、オナニーの訳語として“自慰”という言葉を充てた人物でもあるらしい(それ以前は“手淫”と言われ忌み嫌われる行為だったのだ)。そして産児制限運動。夫から毎晩求められる妻たちが興味津津だったエピソードも微笑ましい。コンドームを洗って何回も使用するとか・・・

 共産主義寄りの自由思想のため大学を追われることになった経緯、そして労農党の指導者としての道を決意する山宣。その人物像はなんとも穏やかで優しく病的で、とても政治家には似合わない雰囲気。しかし、無産者に対する思いやりや治安維持法反対の信念には、彼自身からにじみ出る強さが感じられるのだ。

 山宣を慕い、のぶ(谷育子)を取られるのではと嫉妬もする本田(中谷一郎)が最後には「ブルジョア的だ」と批判し離れていくも、戦後墓碑の前に片足を失った復員兵姿で登場するところには思わず涙。山宣が刺されたシーンも痛々しかったが、それ以上に泣けた。結婚していた2人だったのに、投獄され、別れてしまったようであり、他の同志との間に出来た子供たちを見るところも・・・

 刑事役の田中邦衛や共産党員役の宇野重吉など、脇を固める俳優も印象的。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
kossy