劇場公開日 1969年4月10日

緋牡丹博徒 二代目襲名のレビュー・感想・評価

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2.0長門裕之の退場が早すぎる

2023年5月22日
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名作揃いの『緋牡丹博徒』シリーズの中ではあまりパッとしない一作。矢野竜子の二代目襲名という本編に大きく関わるイベントがあるにもかかわらず物語は凡庸でギミックに欠ける。とはいえ任侠映画とは往々にして凡庸でありギミックに乏しいものであり、そういう骨格部分の貧弱を逆手に取って役者が自由闊達にスクリーンを駆け回る圧倒的なダイナミズムこそが任侠映画の真髄だ。一方本作には役者にさしたる動きがない。歌舞伎でいうところの「見得」に当たるような瞬間がない。ゆえに物語のアラが前面化している。『花札勝負』でみられた悪どいヤクザたちの私利私欲に翻弄された家族のために涙を流す藤純子や、敵方の客人でありながら藤純子に協力する高倉健の侠気といったものは本作には感じられない。唯一、お調子者の渡世人として登場した長門裕之にはなかなか見所があったのだが、彼は中盤であっさり殺されてしまう。彼の運用次第でいかようにも耽美で刹那的な任侠世界が描けたはずなのにと思うと残念でならない。

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