劇場公開日 1953年6月17日

「良い子の皆様へ 錦ヶ浦まで我慢しましょう♥」日本の悲劇(1953) マサシさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5良い子の皆様へ 錦ヶ浦まで我慢しましょう♥

2024年1月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
マサシ
Gustavさんのコメント
2024年1月4日

マサシさん、評価を離れて共感ありがとうございます。
木下惠介監督はメッセージをどう伝えるか真剣に考えて映画を創っていたと思います。叙情派監督と見られていますが、その本質は理知的で冷静です。映画の面白さを追求した黒澤監督とは好対照ですね。戦後の価値観が大きく変わらざるを得ない世の中の変化に対応できない、一人の母親のドメスティックな事件を日本の悲劇という仰々しさに、この作品のメッセージが込められています。それは日本的家族の崩壊、アヴァンゲールの転換を意味すると思います。それほどに戦争を体験した日本の敗戦で破壊されたものは、物質的なものだけではないことを言いたかったのだと受け止めました。主人公を冷徹に突き放しながら、その母性故の一途さが理解されない悲劇を貫徹しています。
木下監督の「破れ太鼓」から生まれたテレビドラマ「おやじ太鼓」を私も観ています。進藤栄太郎のアヴァンゲールの頑固さがコメディとしてまだ成立していた時代でした。菅井きんのお手伝いさんが店屋物のうな重に一喜一憂する場面が面白かったですね。その時うな重を食べたことの無い私は、その後中学2年生の時初めて東京に行って、うな重とトンカツの美味しさに驚嘆しました。今の海外の観光客の心境に近いものでした。東京の高層ビルディング(当時の日本一の霞が関ビル)に驚かない私に父は拍子抜けしていました。アメリカ映画を観ていた私は、ニューヨークに比べたら大したことないと思いました。
色んな意味で、映画体験は然も知ったかぶりになるものですね。今年も宜しくお願いします。

Gustav