劇場公開日 1971年2月13日

「芝居の面白さ、脚本の上手さ、演出の個性が一つになった演劇映画の力作」修羅 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5芝居の面白さ、脚本の上手さ、演出の個性が一つになった演劇映画の力作

2021年11月17日
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鑑賞方法:映画館

「薔薇の葬列」のユニークさには正直、面白くも困惑したが、この松本俊夫作品には驚嘆した。稀に見る力作であり、作者の個性と力量に感動もした。背景を黒く塗り潰して、登場人物の身体だけに光を当て、純粋に芝居の面白さを追求している。この簡素な舞台空間を最後まで押し通すと退屈させるのではと危惧したが、物語の面白さが上回り、映画の世界観に終始入り込むことが出来た。何より脚本の上手さ、演出の厳しさがある。グロテスクな展開、時代風刺、そして人間悲劇を分かり易く描いた力量を最大の美点とする映画である。制作資金面の事情の有無は知るところではないが、舞台劇の映像化として成立しているし、映画としてもまとまっている。ただ同時に、ここまでの徹底振りと割り切り方が広範囲な評価を得ることは難しいと思われる。
憎悪と畏怖と狂気の乱舞の如き復讐劇。それに独特なモンタージュで風刺を効かせた松本演出の個性。今までに出会ったことのない日本映画の個性的な力作に見入る貴重な映画体験をする。

  1979年 5月7日  三百人劇場

Gustav