劇場公開日 1956年1月14日

「夫婦の実像がじわじわと。」驟雨 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0夫婦の実像がじわじわと。

2022年11月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1956年。成瀬巳喜男監督。結婚4年目の夫婦のもとへ、新婚旅行から帰っきた姪が一人でやってくる。夫がいやになったという姪の話を聞きながら、自分たちのことを考えていく夫婦。隣に越してきた夫婦をはじめとしたご近所との関係、世話をしている野良犬をめぐるあつれき、夫の会社の合併から出た退職勧奨、、、。さまざまなエピソードを紡いでいく中で、徐々に明らかになる夫婦の本当の関係。
次々とやってくるエピソードがあまりに些細で日常的なものなので、前半はどうしたものかと戸惑いしかないが、夫の胃病と貧乏ゆすり、社交的なことが苦手な妻の「固さ」があらわになるにつれ、前半のエピソードがネタに過ぎないことが明らかになってくる。当初の余裕がなくなっていき、露呈されている本来の男と女の姿。すばらしい。台所で泣いたと思ったらお茶漬けをすする、原節子の姿には凄みが漂っている。若い時に見たら面白くないと一蹴してしまいそうな傑作。

文字読み