劇場公開日 1973年3月24日

「当時の団塊の世代の虚無感を本作は見事に表現している 当時の若者達に支持された理由はよく分かる」恋人たちは濡れた あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0当時の団塊の世代の虚無感を本作は見事に表現している 当時の若者達に支持された理由はよく分かる

2019年11月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

これもまた70年安保闘争に敗北した団塊世代の鎮魂の映画のひとつだろう
日活ロマンポルノというフォーマットを使ってはいるが、描こうしているテーマはそれだ
しかし、彼等自身の姿として描いており、下の世代の物語にすり替えるような偽装をしてないだけ好感が持てる

冒頭は葬式のお経から始まる
誰が死んだのか?
勿論70年安保闘争だ
だから主人公は万博音戸を繰り返し歌う

♪1970年の~と

主人公は各地をさ迷って、外房大原に流れて来ている
どこに居たのかと聞かれて、彼は成田をを外したその周囲の町の名前を次々にあげる
彼が殺したというのは、成田闘争で殺された機動隊三名に関与したことを意味するのかも知れない

23歳位だろうか?
ということは大学を卒業したものの、まともな就職先がなく、各地のパチンコ屋を転々とし、今は大原の小便臭いポルノ映画館の下働きのバイトだ

彼は5年前に確かに故郷の町をでたのだろう
しかしこの大原であるとは限らない
彼はどこの町に行っても、中川克では無いのか?と聞かれたに違いない

中川克という名前に意味はない

それは映画館の奥さんが聞いたように、あなた過激派?という問いかけだ

それは一般人だけでなく、かって属していた学生運動の組織から問いかけられるのだ
70年安保闘争が敗退して彼は学生運動から距離を置いて離脱した
都はるみの好きになった人を繰り返し歌うのはそれだ

♪さようなら、さようなら、好きにな~った人~

しかしまともな就職はできず、各地を転々とするしかない
そして各地で主人公をみかけると、彼は活動家では無かったのか?と問われ、活動に引き戻されようとするのだ

しかし彼は最早政治活動にはもう嫌気をさしているのだ
海岸べりの草むらで野外セックスに励む男女を観察するように傍観するのみだ
その態度が活動する側からみれば許せない背信行為なのだ
だから暴行を受けるのだ

つまり活動から離脱しようとする仲間を粛清する内ゲバを扱っているのだ
そう、本作公開当時は連合赤軍の凄惨な内ゲバ事件の時代だったのだ

彼は活動から距離を置こうとしているのだが、やがて彼等に引き込まれていく
長く続く飛び馬のシーンは今後の活動方針を示したものといえる
急進的ではなく、地道に漸進的に活動を進めて行こうということだ

しかし結局のところ彼は内ゲバで殺されていくのだ

ポルノシーンは長いが、それはこのような隠されたテーマで映画を撮るための方便に過ぎない

現代の露骨で過激なAVからすれば大したものではない
とはいえ黒い四角いベタや白いインクで局部を隠すシーンは多い
しかし現代の女性なら問題なく観ることができるはずだ

当時の団塊の世代の虚無感を本作は見事に表現している
当時の若者達に支持された理由はよく分かる

あき240