劇場公開日 2007年11月10日

「ただのアクション映画ではないのです 本シリーズの本当のテーマとは何か? それが本作で分かります」ボーン・アルティメイタム あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ただのアクション映画ではないのです 本シリーズの本当のテーマとは何か? それが本作で分かります

2021年7月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

アルティメイタムとは最後通牒の意味
ボーン最終章とか完結編とかくらいの意味合いでしょう
しかし本当の意味が隠されています

滅法面白い!
アクションも凄いが、そこにいたるサスペンスがとてつもなくうまい

今回は絶対前作を観てないと面白さが半分以上失われてしまうので必ず観て下さい

冒頭が前作の終盤シーンから始まります
ええ?なんで?となりますが、それが中盤の山場に繋がっていく為の前振りだったんだと分かり出すと、ワクワクしてそのシーンをいまかいまかと待ってしまう、この仕掛けが上手い、ニクい!
いよいよニューヨークにボーンが乗り込むとキター!となります

今作は冒頭でのモスクワ、トレノ、パリ
そしてロンドン、マドリッド、モロッコはタンジール
そして最終決戦はニューヨークと進みます

モロッコの街タンジールは、同じ北アフリカのカスパのような迷宮です
素晴らしい絵になるロケ地を選択しています
その複雑に建て込んだ建物の屋上を疾走して隣の建物のキッチンの窓に飛び移るシーンは目を見張るハイライトです

その街中でのスクーターとバイクのアクションシーンもまた圧巻です
これ実はミッションインポッシブル2への皮肉だと思います
「バイクアクションなら、こういう風に撮らないとね」という監督の声が聞こえる気がしました

前作でフューチャーされたパメラ・ランディが主人公かと思うくらい大活躍
ニューヨークのオフィスが豪華だったので出世したとばかり思っていたのですが、なんとまあラングレーの本部からの左遷先でありました
しかし決めてくれるんです
シビレました

そしてニッキーがまたも登場で出番も多く、これまた嬉しい!
しかも、ボーンとなにやら昔何か個人的にあったような意味ありげなシーンも
逃亡のため髪を切った姿は、なんとマリーに似ています
そして彼女の満面の笑顔でラストシーンになるのです

ボーンシリーズはこれにてお仕舞い
題名どおり完結です
本当?

これで終わったらもったいないでしょ!
これだけ面白ければ続けなきゃ!やらなけば!

続編との繋がりは天下一品のボーンシリーズですが、続編作りの苦しみがついに訪れたのです

CIA の暗殺者のように、どこまでも追ってくるのです

次回作の第4作はスピンオフもの
第5作に続いていきます

本シリーズのテーマとはなんであったのでしょうか?

第1作 ボーン・アイデンティティー 2002年
第2作 ボーン・スプレマシー 2004年
第3作 ボーン・アルティメイタム 2007年

この期間中何があったのか思い出して下さい
本シリーズ公開前の2001年に911が発生しています
同年10月には早くもアフガニスタンに米軍が派兵され、首謀者ビンラディンを捕らえようと対テロ戦争が始まっています
大きな軍事作戦はすぐかたがつきましたが、ビンラディンは捕まりません
あちこちでゲリラ戦がいつ果てるともなくダラダラと続きました
これが第1作公開の頃の状況です

そして2003年からはイラク戦争が始まっています
戦争はあっという間に米軍がバグダッドを占領してケリがつきました
しかし大量破壊兵器を隠匿している筈だとなり、この捜索は2004年まで続いたのですが結局何も出てこなかったのでした
これが第2作公開の頃です

2006年12月30日にはフセイン元イラク大統領が死刑に処されました
そして第3作の本作が公開された2007年になります
この年には米軍占領下のイラクはタリバンの自爆テロなどが頻繁におき、米軍が増派される事態にまでなっていました

結局ビンラディンへの報復は、2011年の米軍特殊部隊による暗殺作戦でようやく決着したのです

何が言いたいのかって?

この頃、米国は911で頭に血が上って、報復のためには手段を問わないようになっていたと言うことです
報復に楯突く国があるなら、「爆撃して石器時代に戻してやる」とマジで恫喝したほどです

法律なんか後回しだ、テロ対策なら盗聴は当たり前、テロリストなんか拉致しても拷問しても構いはしない、どんどん暗殺してしまえ!
正に「ブラックブライアー作戦」が現実であるような様相だったのです

そういう時代であったということです
つまりボーンシリーズは、こんな事で良いのか?
それを問うシリーズであったのです
これが本シリーズの本当のテーマであったのです

平等、自由、公正
米国の理想、あるべき姿から逸脱しているのではないのか?
こんなことをいつまでも続けていていいのか?
正気に帰れ
米国のアイデンティティとは何であったのかを思い出せ

ボーンとは、小川を意味するありふれた名前
しかし背骨のボーンと発音が似ています
米国の背骨のアイデンティティ
それを思いだせ!
本シリーズはそれがテーマでもあったのです

ボーンがすまないと謝るシーンがあります
パメラもお詫びをせねばと言います
それが本シリーズが最終的に伝えたいメッセージであったのです
それがアルティメイタムという本当の意味です

ただのアクション映画ではないのです

あき240
talismanさんのコメント
2021年8月24日

ですよね?ニッキーが髪染めて切った後の顔、マリーにそっくりでした。多分、意識的にそうしたんじゃないでしょうか?

talisman