愛の奇跡

解説

 精神科医のクラーク博士が校長を務める精神薄弱児の施設に、音楽教師のジーンが赴任してくる。心を閉ざす少年と仲良くなったジーンはその子を全く面会に来ない両親に会わせようとするが……。障害を抱える子供とそれを見守る大人たちの心情を描いた物語。実際に障害を持つ子供をキャスティングし、この映画を撮り上げたカサベテス監督だったが、製作のスタンリー・クレイマーと対立。結果、カサベテスはハリウッドから干されてしまう。

1963年製作/102分/アメリカ
原題または英題:A Child is Waiting

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

5.0生きるとは演じることである。

2024年9月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1963年。ジョン・カサヴェテス監督。ある知的障害児訓練施設に預けられることになった少年は作業をせずに呆然とするばかりだったが、採用されたばかりの女性指導員には心を許すようになる。しかし、「愛情」をもって接しようとすることを施設長は認めず、「規律」を教えようとする。そんな中、女性はルールを破って少年の母親を施設に呼んでしまうが、、、という話。
実際の障害児たちが出演し、「生きるためには愛情ではなく規律」という明確なテーマを持つ作品。愛情で包み込むことでなく、「何をすべきか」を教えることが、自分で判断できることを増やすことであり、それこそが人生であるということが、愛情あふれる女性指導員にも、障害児の親にも、反省とともに理解されていく。変化していくのは大人たちなのだ。
「規律」のテーマは、自身の間違いに気づいた女性指導員が子どもたちに教える音楽劇において、歌とセリフを覚えることに終結していく。生きるとは生き方を覚えていくことであり、それは演技することと同質のものである。
若きジーナ・ローランズが障害児の母親役として出演している。その息をのむ美しさと圧倒的な存在感。追悼。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
文字読み

3.5子供たちの自然な姿

2023年9月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

感傷的や感動を煽る演出描写は控えめに知的障害児たちを自然に映し込みながら今ある現実と向き合い将来を改善させようと厳しくも優しさが溢れている反面、成人した知的障害者の施設を描写した残酷に思えるリアルな場面では、カサヴェテスの真摯な意気込みが感じられ生半可なヒューマンドラマには収めないシリアスな雰囲気すら感じてしまう。

施設に赴任したジュディ・ガーランド演じるハンセンに懐く知的障害児のルーベンは自閉症を負っているようにも、そんなルーベンの母親を演じたジーナ・ローランズの若かりし美貌と演技は出番が少ないにしろジュディ・ガーランドを勝る存在感を発揮している。

変わらなければならないのは携わる人々、子供たちの親である大人がしっかりと受け止めなければならない現実、60年代初期に描かれたこの物語は今でも何ら古臭くも時代遅れでさえ感じることもなく作られた話ではあるにしても徹底したリアルがカサヴェテスの手腕であるかのように。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
万年 東一