劇場公開日 2007年8月25日

「これはテロだ!」シッコ 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5これはテロだ!

2007年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『華氏911』のマイケル・ムーアが、またまたアメリカの恥部を暴きました。それは、医療問題。先進国で唯一と言われる国民皆保険システムの無いアメリカの医療に関する問題をまじめに暴きます。

”テロより怖い医療問題”と言うのがこの映画の宣伝文句ですが、結構シャレになっていません。アメリカテレビを見ていると、よく「保険が無いので病院にいけない。」とか「私の保険はフルカバーなので大丈夫だ。」とか言うセリフを聞きます。国民皆保険の整っている日本では、理解しがたい言葉ですが、アメリカではそれが普通です。富める者にだけ富が集中し、そうでない人々は益々貧困になっていく、それがアメリカであると言う現実。安全もお金で買い、健康もお金で買うと言うそのアメリカの現実。これでもかと、希望がなくなるほどに、アメリカの医療システムのダメさ加減が明らかにされます。

政府の許可無しでキューバに渡航したため、マイケル・ムーア自身に米財務省から調査が入り、その結果として、政府からのフィルムを差し押さえられる危険性が出てきたので、編集したフィルムをカナダに隠匿したりと、公開前からいろいろと騒動はおきていましたね。

アメリカの医療制度の比較として、カナダ、イギリス、フランス、キューバの各国の医療制度が説明されているのですが、いずれの国も非常に手厚い医療制度(フランスに至っては、子供の養育制度まで)が整っていることに、非常に羨ましい気になりました。これらの国は、基本的に医療費は無料ですからねぇ。翻って、日本はと言えば、国民皆保険のシステムは導入されていますが、年々医療費は高騰し、それに伴い個人負担も増加傾向。段々アメリカのダメダメ医療システムに近づいていると言っては過言でしょうか。そういえば、子供の養育システムも非常に充実しているフランスは、先進国で数少ない子供の出生率が上昇した国ですからねぇ。少子高齢化が激しい日本も、参考にすべきです。

それにしても、後半の、911の救護者達に起きている悲劇の話は、ちょっとどうかなぁと思いましたよ。なんで、アメリカ政府は救済しようとしないんでしょうね? まぁ、だからキューバに行ってしまったわけですが、それがアメリカの病巣の深さを印象付けています(キューバへの渡航手段に関しては『アメリカの国家安全保障上の問題から(by米国土安全省)』描かれていません。このカットがDHSの紋章を背景にしているのも、いかにもマイケル・ムーアらしいですね)。見てみて、アメリカの先行きに不安を覚えました。そして、アメリカに追随しようとしている日本にも。どこか海外に、逃げたくなりましたよ。ブッシュ政権が、この映画を敵対視していることも、よくわかります。日本がこうならないためにも、よく、政府の行動は監視しましょうね。

勝手な評論家