劇場公開日 2007年8月25日

「逆から読むと愛着のわくタイトル。」シッコ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0逆から読むと愛着のわくタイトル。

2022年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 かつては薬関係のお仕事に従事したことがあるため興味のある映画でした。アメリカは先進国では唯一公的な国民皆保険制度を持たない国。アメリカへ旅行に行って、海外旅行者保険が切れたら大変なことになることがわかりました。国民は民間の医療保険に加入し、多くがHMO(Health Maintenance Organization)というへんてこな組織が医療機関やカバーできる病気を選定してしまうという・・・ややこしそうです。とにかく、患者の既往歴とかをチェックし、この病気には保険が利かないなどと、患者にとっては不利な制度。

 保険会社も病院も利潤追求が最大の目的。あれこれ理由を見つけて患者を拒否すればするほど有能な医者ということになるらしい。まぁ、日本でも生命保険なんてのはそうだけど、患者にとっては負担がどうこうよりも、命がかかっている問題なわけですから・・・。日本では病院が救急患者を受け入れてくれないことが新聞を賑わすのですが、アメリカではこれが常識なんですね。

 今回のマイケル・ムーア監督。まずはカナダに行って、医療費がタダだったことに驚く。イギリスに飛んでも、HNSの制度に驚く。そしてフランスでも・・・。そういえば、日本も患者負担金がどんどん増えてきてますが、老人医療費の高騰を理由に医療費を抑制するだけの医療行政に問題があるのでしょう。国庫負担率を下げ、公共事業費ばかりに予算を使うという・・・。国立病院ってのも無くなっちゃいましたからね~小泉行政改革のせいで。「官から民へ」などというスローガンが突き進めば、そのうち日本の保険もアメリカ型になりそうで怖いものがあります。

 映画ではヒラリー・クリントンが国民皆保険を訴えるシーンもあったりして、政治色の偏りがある内容なのか?と思わせたりするのですが、その夫人も現在は医療保険組織から巨額の献金を受けていて、全く口にしなくなったとか。日本では医療費の大部分を占める薬剤費が同じような傾向があり、厚生官僚の美味しい天下り先となる製薬メーカーから巨額の献金を享受する政党の存在。ほとんど同じ構造です。

 イラクに出稼ぎに行く父ちゃんのエピソードとか、最初はどことなく反米的なテーマも見受けられたけど、監督としてはアメリカ人に観てもらいたい映画なので、きっちりまとめているところがえらい。病気になったらキューバへ行こう!なんて言えないですもんね。

【2007年10月映画館にて】

kossy