劇場公開日 2005年9月10日

「けだるい退廃と美しい救い 格調高いメロドラマ」理想の女(ひと) Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0けだるい退廃と美しい救い 格調高いメロドラマ

2013年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

総合:75点
ストーリー: 70
キャスト: 80
演出: 75
ビジュアル: 80
音楽: 75

 高級保養地に暇を持て余したお金持ちが集う。若い社交界の華と男の間を渡り歩いてきた歴戦の女とが揃えば、噂好きの有閑マダムたちの期待を裏切らないことが起こって当然だ。美しい景色だけどそのけだるく妖しい雰囲気の中で、格調高く退廃に浸かっている人々が描かれている。それだけでも面白かったしそれで終わりかと思ったが、その後の展開も物悲しくも美しかった。
 スカーレット・ヨハンソン演じるメグの、まじめだけど世間知らずな清純な若い女と、ヘレン・ハント演じるアーリンの、打算的で男に取り入る経験豊富な悪女という、対照的な二人の存在と彼女らの織り成す生き方の交錯がなんとも興味深い。嘘が嘘を呼び、疑惑と憎しみと悲しみが蓄積されてより大きくなっていく過程の心の動きの描き方が上手で、その後で二人の違う一面がそれぞれ垣間見れる。ヨハンソンも美しくて良かったのだが、特に人生の辛さを踏まえた経験と愛情を滲ませるヘレン・ハートには感心した。彼女の本質は実は一番最初のレストランの場面でも出ていた。困難な状況でも冷静に誇りを持った態度を示していた。

 パーティに行く準備をする場面をじっくりとアップで撮影したりと、女性の妖しさと美しさを引き出すカメラワークが雰囲気作りに一役かっている。また高級保養地アマルフィの美しい景色が、逆に世間離れした上流階級の醜聞を作り出して包み込むのに有効に使われている。静かにしっとりと流れる音楽も薄暗い映像に合っている。

コメントする
Cape God