劇場公開日 2022年1月22日

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「【「天使のように大胆に、悪魔のように細心に」】」小間使の日記 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【「天使のように大胆に、悪魔のように細心に」】

2022年2月3日
iPhoneアプリから投稿

「天使のように大胆に、悪魔のように細心に」とは、黒澤明さんが数十年前のウイスキーかなにかのCMで話していた言葉だ。

この作品には、そんな要素が詰め込まれているように思う。

社会情勢がどうあれ、直接的に火の粉が降りかからない限り、人間の愚かさに変わりがないということを示唆した作品だ。

この作品の後に制作されたカトリーヌ・ドヌーヴの主演作が日本では知られているが、僕は、どちらかというと、この「小間使の日記」のセレスティーン演じるジャンヌ・モローが好きだ。

1930年代のヨーロッパは、第一次大戦の余波で引き続き混乱していたことに加え、アメリカ発の世界恐慌による大不況に苦しみ、そして、第二次世界大戦の足音がヒタヒタと聞こえている状況だった。

そんななか、フランスの田舎で危機感もなく暮らすブルジョワジー達と、同様に凡庸なままの使用人達。

それを逆手に、周りを注意深く観察することによって、漁夫の利を得ようとし、更に陰で支配しようとする小間使の女・セレスティーン。

一義的には、こうしたブルジョワジーや周りにたむろする連中を皮肉っている作品なのだとは思うが、改めて観てみると、現代の僕たちの社会を批判しているようにも思えて、世の中はさほど変化していないのだなと苦笑してしまう。

世界が活力を失うと、人々は凡庸となり、小間使のような輩が隙をぬって影響力を拡大していく……のは、なんか、やっぱり似ている気がする。

ワンコ