ミュンヘンのレビュー・感想・評価
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忘れられる目標
きっかけはオリンピック村での殺戮で、その後にはやってやられての繰り返しである。どちらの陣営もしてることは同じで、情報を集め、近づき、殺す。
自分たちの国が欲しい。祖国を死守する、自分たちの権利が尊重される社会が必要だ。という真っ当な目標が、いつのまにか忘れ去られ、復讐の連鎖から抜け出せない。
個人としては家族を守るといった、また別の目的もあり、主人公にとっては第一目的であった。その目的も国家による大きな目標に飲み込まれ、彼自身が家族を傷つけてしまうことになるだろう。
作中に直接は大きく描かれていないが、アメリカに対する視点も感じられ、観客に疑問を投げかける作品だった。
テロ、正義、愛国心、人への愛、共通点と差異、多様性と差別、様々な観点からみることができる。
チームが任務を遂行する様はわくわくし、映画的に楽しかった。
当時のニュース映像を鮮明に覚えている。選手達が空港でテロリストに連...
当時のニュース映像を鮮明に覚えている。選手達が空港でテロリストに連行されて行く場面だ。しかし、子どもだったので、その後の事態は知らない。
以来、争いは終わっていない。
終わることはないのかもしれない、と、
この映画を観ておもった。
テロリスト目線。
暗殺のために雇われた人たちが共同生活する感雰囲気が最初は楽しい。
女装からテロの場面も新鮮。
アメリカ人が事前にテロを止める場面はなんか中指立ててかわいかった。
隠れ家で鉢合わせた別の革命家の「祖国がないということがどういうことかわかるか?」の場面が印象深い。
頼りない国かもしれないけど日本人でよかったです。
「スピルバーグ映画に見る物なしの
食わず嫌いをやめて、この作品だけは観ておいても良いかもしれない」
スピルバーグにしてはよくできた作品。主人公はエリック・バナ。まだボンドになる前で髪を伸ばしているダニエル・クレイグも意外と好演。1972年のミュンヘンオリンピック事件と、その後のイスラエル諜報特務庁(モサド)による黒い九月に対する報復作戦を描く。自身がユダヤ人故の僻み根性からスピルバーグの政治モノは大抵一方的視点からの穿った描写で観ていて途中何度も嫌気が差すのが当たり前だが、この作品では冒頭のシーン以外で敵が悪いことをする描写がなく、結果的に「悪いことをしていないように見える一般人を一人ずつ順に殺して行く」シーンの積み重ねになり、戦争に善悪がないことを浮き彫りにしているという点、更には「どうやって捜すかか」「どうやって殺すか」「どうやって逃げるか」といったクライムアクションのような見せ方をしているという点で、最後まで違和感なく進行して行く。
アカデミー賞5部門にノミネートされたが全て逃しているので、やはりスピルバーグ映画に見る物なしとも思うが、この作品だけは観ておいても良いかもしれない。
平和主義者スピルバーグの願い
1972年のミュンヘン・オリンピックで、11人のイスラエル選手がパレスチナ・ゲリラ“ブラック・セプテンバー”に殺された。イスラエルの諜報機関“モサド”は暗殺チームを組織し、首謀者たちを暗殺していく…。
実際に起きた悲劇の事件とその後の報復行動を描いたスティーヴン・スピルバーグの2005年の作品。
パレスチナ・ゲリラやモサドなどの描写が物議を呼び、数あるスピルバーグの作品の中でも屈指の問題作で、重くシリアスだが、一本の映画としては超一級品。
暗殺チームの面々にはそれぞれ得意分野があり、スパイ・サスペンス映画としての醍醐味も充分。
とりわけ秀逸だったのが、電話に爆弾を仕掛けるもターゲットの娘がその電話を取りそうになるシーン。スピルバーグならではの緊張感あるサスペンス演出に、さすが!と唸らされた。
祖国の為、同胞の為、非道なテロリストを討つ。
果たしてそれは、正義の行動か、人が人を殺める行為か。
やがて仲間や自分の身にも危険が迫り、精神的に追い詰められていく。
悲劇が報復を呼び、報復が更なる苦悩や哀しみを生む。
ここに、平和主義者スピルバーグの願いが感じられた。
平和なオリンピック、その平和が今朝5時頃破られました
映画「ミュンヘン」(スティーブン・スピルバーグ監督)から。
史実に基づいているというので、鑑賞を中断し、
ちょっとインターネットで事件の流れを調べてから再開した。
映画の冒頭、テレビニュースが流れる。
「平和なオリンピック、その平和が今朝5時頃破られました」
ミュンヘンオリンピックは、1972年開催(40年前)で、当時私は14歳。
恥ずかしい話、この事件のことは、あまり記憶に残っておらず、
体操男子の金銀銅メダル独占と塚原が考えた「月面宙返り」に驚いたり、
テレビ番組「ミュンヘンへの道」で、男子バレーボールに夢中だったし、
水泳、マーク・スピッツ(アメリカ)の7種目の金メダル獲得に湧いた。
当時、中学でバスケット部だった私は、男子バスケットボール決勝
(アメリカ対ソ連)で、アメリカが残り3秒で逆転された記憶は蘇った。
そんなミュンヘンオリンピック会期中に起きた事件だったとは・・。
パレスチナゲリラが選手村のイスラエル選手宿舎を襲撃し大惨事、
そしてこの事件後、イスラエル政府はパレスチナゲリラの暗殺を命じる。
ハムラビ法典の「目には目で、歯には歯で」は
「やられたらやりかえせ」という意味ではないにも関わらず、
「報復には報復を」と考えてしまう民族の争いの怖さを改めて実感した。
脳裏に浮かんだのは「ロンドン五輪の韓国サッカー選手の竹島領土問題」、
オリンピックって「国の威信をかけた戦い」の性格が強いからなぁ。
一歩間違えると、大惨事になることを、この作品から学んだ気がする。
今、近隣諸国と難しい関係に置かれている日本、報復には意味がないので、
挑発に乗り、間違っても変な行動をしないで欲しいと願うひとりである。
スピルバーグ、さすがの底力
イスラエルとパレスチナの対立や政治的背景に詳しくなく、彼岸の火事のように感じてしまっている自分としては、その渦中となっている問題について、真に迫ってくるものがない。とはいえ、復讐の連鎖が生み出す悲劇を暗示するかのように、ニューヨークの“あの場所”が映し出されるシーンには、ハッとさせられのだが。
70年代の雰囲気を再現した町並みや衣装、小道具、彩度を落とした乾いた画面がいい感じだし、娯楽作品と割り切ってみるのは気が引けるけど、それでも娯楽性とストーリー性、テーマ性を高いレベルで融合させ、164分という長尺を飽きずにみさせる緊迫感・緊張感は見応え十分。こういうものをたった半年で作り上げてしまうスピルバーグとそのスタッフたちの底力はさすが。
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