「真剣に「楽しく生きる」ということ。」あまろっく luna33さんの映画レビュー(感想・評価)
真剣に「楽しく生きる」ということ。
この手の映画は(面白いだろうと思いつつ)基本スルーしちゃう。
ところがなかなか評判が宜しいようなので、せっかくなので
じゃあ観てみるか、と。
最近はすっかり涙腺がゆるんでるし、それなりに泣いちゃうかも
などと思っていたら…想定を遥かに超えて大泣きしてもうた。
いい歳したオッサンがまあ何と恥ずかしい。
でも何というか、久しぶりに「きれいな涙」を流せたように思う。
この作品に出てくる人たち、基本的にみな「良い人」なんだよね。
そういう意味でもあまり大きな波が立つようなドラマチックな展開
というわけでもなく、だから特に想像を超えるような物語ではない。
でもだからこそラストの大きな感動へと繋がってるんじゃないか、
という気がする。
色々面倒な世の中だけど、誰かを大切に思う気持ちや家族の愛。
もっと素直に信じてみようと思える。
もっと前を向いて生きてみようと思える。
だって信じる者はきっと救われるのだから。
そう思えたら、それだけできっと幸せな人生になるんじゃないか。
たぶん「本気でそう思えるかどうか」が運命の分かれ道なのだ。
そのために大切なのは、真剣に「楽しく生きる」ということ。
単純に笑って泣ける映画だけど、深い感動がそこにはあった。
江口のりこさん、実に素晴らしい。
彼女特有の「ひねくれ」というクセが色んなフリになっており、
良い人だらけのこの作品を見事に成立させてくれたと思う。
そして父親の大きさを知り、「私が尼ロックになる」という決意。
不器用でひねくれ続けた彼女だからこそ、グッと来るものがあった。
中条あやみさんも良かった。
彼女の底抜けに明るく天真爛漫な振る舞いが周囲をいかに癒すか。
そしてその裏にある悲しい生い立ち。
何より、わずか1か月だった結婚生活を「大切に思う」気持ち。
ただ年齢設定には無理があったように思う。別に20歳じゃなくても
物語は成立したと思うんだけどなあ。
鶴瓶師匠もさすがでした。あと息子の太郎君も。
あと個人的に一番良かったのは婚約者役の中林大樹さん。
最後の最後、彼の恥ずかしそうな笑顔を見て完全に涙腺崩壊した。
やってくれたね。完全に「MVP」です。
ただ家族の在り方って本当にバラバラだし、それぞれが持つ家族観も
本当にバラバラだと思う。家族だからこその愛もあれば憎しみもある。
そういう意味では観る人を選ぶかも知れない。
皆が皆こういう美しさを受け入れられるわけでもないだろうからね。
おそらくこの映画のポイントはいかに素直に観るか、じゃないだろうか。
よって「素直な人」には強くお勧めしたい。
追伸
佐川満男さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
最後まで素晴らしい演技をありがとうございました。
追記
どうしても書いておきたかった事を追加します。
時代の流れとともに個人の価値観がどんどん尊重されるようになり、
それによって声を上げやすくなったり、昔と比べて色々救われる人が
増えてきたんだろうと思う。
ただその一方で「配慮」という名のもとに、誰かに意見すること自体が
とても難しい時代になったとも言えるのではないだろうか。
いわゆる「お節介」などという表現では収まらず、もはや「押し付け」
と言われてしまう時代でもあるのだ。
でも僕は思うのだ。
人は決して「自力では変われない」のだと。
誰かからの応援だったり見守りだったり、時には批判だったり…。
それらが自分の中に入り込んできた時、何かしらの化学反応が起きる。
人が変わるって、そういう時なんじゃないのかと。
確かに押し付けるのは良くないと思う。
確かに相手を尊重すべきだと思う。
でも押し付けたって良いじゃないか。そこに「愛」さえあれば。
僕はずっとそう思っているのだ。
優子は自力では決して変われなかったはずだ。
父親や早希がこれでもかと一方的に優子へ押し付けてくる。
でもきっとその「鬱陶しさ」こそが彼女のひねくれを溶かしたのだ。
なぜ溶けたのか?そこには大きな大きな「愛」があるからだ。
早希は自身の悲しい過去から家族に対する強い憧れがあり、
それを実現すべく半ば強引に竜太郎と結婚した。
新たな家族となった優子へも自分の理想を押し付けたわけだが、
それでも早希には紛れもない本物の「愛」が確かにあった。
だからこそ優子の心は揺らぎ、そして雪解けへと繋がったんだろう。
愛のある押し付け上等じゃないか。
それで変われる人だって、救われる人だって必ず居ると思うのだ。
そもそも家族って本来は「そういうもの」じゃないのか。
ずっと孤独だった早希は安心して喧嘩できる相手も居なかった。
そんな彼女には優子との喧嘩すらも嬉しくて仕方ないのだ。
それを思うと涙が止まらなかった。
何と愛おしい人なんだと。
たぶん、そこに一番やられた気がする。