コラム:若林ゆり 舞台.com - 第11回

2014年7月18日更新

若林ゆり 舞台.com

第11回:今年大ブレイクしている映画界の寵児・池松壮亮が「愛の渦」の監督と再タッグ! 「母に欲す」で舞台でも魅力炸裂中!

日本映画界の現在と将来を背負う若き逸材、ということに異論のある人はいないだろう。「愛の渦」や「大人ドロップ」、「ぼくたちの家族」など、2014年だけで出演映画がなんと8本も公開! ドラマ「MOZU」でも強烈な印象を残した池松壮亮が、ここへ来て舞台でも素晴らしい結果を出している。これは事件だ! というわけで、いまをときめく池松壮亮に話を聞いた。

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池松が今回挑んだのは、演劇ユニット“ポツドール”を主宰する演劇界の異才・三浦大輔が、“息子(兄弟)にとっての母親”をテーマにした「母に欲(ほっ)す」。主演映画「愛の渦」の監督として出会った三浦からのラブコールに応えた形だ。「『愛の渦』が終わってすぐ言われたんですけど、そのときに渡されたプロットは内容がまったく違ってました(笑)。だいたいお母さんの話じゃなかったし、兄弟でもなかった。ただ、三浦さんに求められたらやるしかない、と思ったんです」

池松がこれほど強い意志を抱くのには、理由があった。子役時代から「ラスト・サムライ」でトム・クルーズと共演したりと順風満帆なキャリアという印象をもつ人も多いかもしれないが、本人としては「誰にも振り向かれず、無視されてもがいていた」時代が高校の終わりごろから大学卒業まで続いたという。

「大学時代は自分の価値観なんてわかってなかったんで、これからどうすべきなのか、どういう人たちと出会っていくべきなのかっていろいろ考えていました。それでいろんな映画を見まくって。そのとき引っかかった作品のひとつが、三浦さんが監督した「ボーイズ・オン・ザ・ラン」だったんです。理屈じゃないところで闘ってる感じがして。理屈でやってる人には絶対出せないパワーがあったんですよ、作品に。それで面白いなとは思ってたんですけど、あまりにも遠いところにいたので、この人とやりたいなっていうことでもなく、ずっと引っかかっていたんです。そうしたら、大学を卒業してすぐ、三浦さんが『愛の渦』に呼んでくれて。正直、『愛の渦』という1本がなかったら僕はいまこの位置にいません。それくらい、『引き上げてくれた』感がすごくある。受けた恩は一生かけても返せないくらいのものなんです」

撮影:引地信彦
撮影:引地信彦

池松壮亮の俳優デビューは11歳のとき、ミュージカル「ライオンキング」のヤングシンバ役だった。しかしこれは自分の意思ではなく、そのときのことは「ほとんど覚えていない」という。12年に「リリオム」(演出:松井大悟)、13年に「ぬるい毒」(演出:吉田大八)でも舞台を経験しているが、「舞台はやめられないという人もいますけど、実を言うと僕の場合は、恐い、やりたくない(笑)。三浦さんに(舞台に出演してほしいと)言われたときは、実は『はぁー……あーあ(鬱)』ってなりました(笑)」という。「普段やっている映画とはあまりにも表現が違うし、僕は人前に出るのも苦手ですし。ただ、観客の反応がダイレクトにわかるって意味ではちょっと面白さも感じています。普段、映画をやっているときには一切考えない“向こう側”が、すぐそこにいるわけですから。そこに向かってやるわけでは決してないんですけど、ただ、ちょっと空気を感じたいみたいなことは2回とも考えていて。そこにはすごく、別の面白さを感じてますね」

筆者紹介

若林ゆりのコラム

若林ゆり(わかばやし・ゆり)。映画ジャーナリスト。タランティーノとはマブダチ。「ブラピ」の通称を発明した張本人でもある。「BRUTUS」「GINZA」「ぴあ」等で執筆中。

Twitter:@qtyuriwaka

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