コラム:佐藤久理子 Paris, je t'aime - 第33回
2016年3月24日更新
パリのIMAXドームシアター「ラ・ジェオド」で、大迫力のドキュメンタリーを楽しもう
いまやすっかり定着した感のある3D映画。とはいえ「あの臨場感には惹かれるけれど、どうもメガネは苦手」とか、「メガネ跡が残るのがまぬけで嫌」という方もいるのではないだろうか。そういう方にぜひ一度味わって頂きたいのが、メガネなしでも3Dに負けない臨場感を味わえる、IMAXドームシアターだ。
現在パリで唯一のIMAXドームシアター、ラ・ジェオド(La Geode)はそのひとつ。歴史は意外に古く、85年にパリの北東、19区のヴィレット公園内に建てられた。磨かれた鋼鉄の表面が鏡のように太陽を反射し、遠くからでも一目でわかる未来都市のような景観を提供している。その壁はいわばタマネギのように重層的になっていて、外側は三角形の鋼鉄6433枚を組み合わせているとか。
シアターの内側はいわば大学の講堂のような階段式の座席(リクライニングはなし)が並んでいる。カーブを描いたスクリーンは表面積1000平方メートルと巨大なため、どこに座っても近くに感じられるのがポイントだ。
以前から一度行ってみようと思いつつ、いまだ未体験だったわたしは今回、試しに「Baleines」というクジラのネイチャードキュメンタリーを鑑賞してみたのだが、噂に違わずかなりの迫力だった。IMAXのスクリーンが縦と横へそれぞれ180度伸びたような空間を想像して欲しい。いわばスクリーンに包まれているような視覚効果には、実際に水中にいるかのごときライブ感がある。巨大なクジラがすぐ近くを泳いでいるように見えるのは、なかなかに冷や汗ものだ。映画を体感できるのはもちろん、いわばアクアリウムのバーチャル体験に近いかもしれない。
上映フォーマットはIMAX180°および3Dと、Ultra-HD 4K。普段はネイチャードキュメンタリーがメインだが、たまに「U2 Vertigo Tour3D」のような音楽フィルムの上映もある。プログラムは時間によっても異なるので、事前にチェックされたし。
さらにラ・ジェオドに併設するシテ科学産業博物館は、この分野の博物館としては欧州でも最大級の規模を誇るものとして知られている。ちなみにラ・ジェオドを擁するヴィレット公園のなかには、昨年できたばかりの大コンサート会場、フィルハーモニー・ド・パリや、老舗のライブ会場ル・ゼニット、音楽博物館もある。また7月から8月にかけては、公園内で野外映画上映も開催され、バカンス代わりにパリジャンたちの憩いの場所となっている。
このあたり一帯は現在も開発が進む地域なだけに、これからパリを訪れる予定のある方は、ぜひ散歩がてら足を伸ばしてみることをお勧めしたい。(佐藤久理子)
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ラ・ジェオド(https://www.lageode.fr)
筆者紹介
佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。
Twitter:@KurikoSato