コラム:大高宏雄の映画カルテ 興行の表と裏 - 第3回

2012年5月22日更新

大高宏雄の映画カルテ 興行の表と裏
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テルマエ・ロマエ
テルマエ・ロマエ

さて、こうしたいくつかの洋画の現状を踏まえつつ、今年のゴールデンウィーク(GW)興行にも少し触れよう。映画興行はここに到って、ようやく少し上昇機運に乗ってきたことを、まず言っておきたい。国内最大手の興行会社であるTOHOシネマズは、4月28日~5月6日の9日間で興収23億円を記録し、これは前年の151%。日本一の観客動員数を誇る新宿ピカデリーは、4月28日から5月4日までの週計で、動員と興収の新記録を樹立した。これは、邦画というのか、東宝の配給作品が圧倒的な強さを見せたことが、何と言っても最大の理由だ。またか、とお思いの方も多いだろうが、現実がそうなのだから、いたし方ない。

なかで貢献度抜群なのが、「テルマエ・ロマエ」だろう。数字は先に記したとおりだが、人気コミックの映画化と、簡単に言ってしまっては身も蓋もない。要は、ヒットを導く題材の核が、この原作コミックにはぎっしり詰まっていたということだろう。あえて、その分析はしないが、コミックを全く知らない年配者までを集客しているところに、核の強固さがしかとうかがえる。

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繰り返すが、GW興行における作品別の上位3本は邦画が占めた。洋画はどうしたという声の持ち主には、今も光明が見えず、とだけ言っておこう。「ドラゴン・タトゥーの女」のようなある意味“問題作”的な作品はなく、すでにヒットしようもないジャンルの作品が大半を占めたとはいえ、今の洋画興行には、一種非哀のような感情さえ立ち上ってくる。

こうした何とも言いようのない非哀ぶりを、今後少しばかり覆すのが、「ダーク・シャドウ」(5月19日公開)という作品だろうが、これは大ヒットして当然の作品。留意すべきは、そのヒットぶりの中身で、30億円あたりでモタモタするようだと、新たな問題点が浮上してくることになる。

夏興行の「アメイジング・スパイダーマン」「ダークナイト ライジング」「アベンジャーズ」あたりも、各々数字の目標は違うが、「ダーク・シャドウ」と全く同じく、ヒットの中身こそが最重要だと言える。さてさて、洋画は今後、いったいどこに行ってしまうのだろうか。

筆者紹介

大高宏雄のコラム

大高宏雄(映画ジャーナリスト、文化通信社特別編集委員)。
1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、文化通信社に入社。現在に至る。1992年より日本映画プロフェッショナル大賞を主催。現在、キネマ旬報「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。著書は「興行価値―商品としての映画論」(鹿砦社)、「仁義なき映画列伝」(鹿砦社)、「映画賞を一人で作った男 日プロ大賞の18年」(愛育社)など多数。

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