コラム:メイキング・オブ・クラウドファンディング - 第8回

2016年10月28日更新

メイキング・オブ・クラウドファンディング

函館港イルミナシオン映画祭・20周年記念作品「函館珈琲」でみた夢のような時間

「映画を創る映画祭」を掲げる函館港イルミナシオン映画祭は、企画~映画製作までのすべてがボランティアで運営され、一般公募したシナリオが映画化されることもある珍しいスタイルの映画祭です。2015年で20周年を迎え、その記念すべき節目に製作された映画が、2013年度函館市長賞受賞作で、いとう菜のは原作・脚本、西尾孔志監督によりオール函館ロケで製作された「函館珈琲」です。MotionGalleryで行われたクラウドファンディングでは目標金額を超える1,182,000円の制作費が集まりました。現在渋谷・ユーロスペースを始め全国で順次公開中の「函館珈琲」における夢のような時間についてのお話を、函館港イルミナシオン映画祭プロデューサーの小林三四郎さんと、元Wyolicaボーカルで映画初出演のAzumiさんに伺いました。

左から小林三四郎氏、Azumiさん、筆者
左から小林三四郎氏、Azumiさん、筆者

■函館の時間の流れ

大高:函館港イルミナシオン映画祭から生まれた映画「函館珈琲」が遂に劇場公開となりましたね!おめでとうございます!
実は、自分が学生の時に製作に関わっていた作品が函館港イルミナシオン映画祭で上映され、映画祭にも参加させて頂いた事がありまして、MotionGalleryでご一緒出来てとてもご縁を感じていました。函館港イルミナシオン映画祭は、函館の持つ港町の雰囲気の中で、地元の人が1から作り上げるアットホームで根付いている感じがあるとても素晴らしい映画祭ですよね。上映するホールの雰囲気も異国情緒が堪らなかったです。映画「函館珈琲」の完成プレミア上映は、昨年の函館港イルミナシオン映画祭で行われたんですよね?! 上映と共にライブも演奏されたと伺いました。

Azumi:はい、出演されている、あがた森魚さんと一緒に。

小林:やっぱりAzumiさんって華があって、そして函館出身のあがた森魚さんも居て、となればとても盛り上がりますよね。

大高:それは素晴らしいですね!「函館珈琲」を拝見し、函館の持つ時間の流れみたいなのがスクリーンに映し出されている実感がありました。そんな映画を見た後にライブでも体感する。とても素晴らしい鑑賞体験ですね。実際、劇中で重要な役割を持つ「コーヒー」と「ピンホール写真」も、それぞれ時間をかけて出来上がるもの。待ち時間が重要な意味を持ちますよね。

小林:そうですね、その「時間」を一番背負っている登場人物は、Azumiさんが演じた“佐和”という役所だと思うんですよね。

「函館珈琲」
「函館珈琲」

■Azumiさんに聞く、歌手と役者の共通点

大高:Azumiさんはずっと歌手として活動されてきて、今回はどういった経緯で映画に出演されたんですか?

Azumi:実は12年前に一度、ドラマで主演のオファーがあったんです。でもその時は音楽に集中してたので、主演の話はお断わりして主題歌だけ担当させて頂きました。今でもその選択に後悔はないんですが、もしその時の仕事を引き受けていたらまた違った今があったんだろうな、という心残りは少しありました。すると今回、その時と同じ河井真也プロデューサーの方から「函館珈琲」の出演オファーを頂いて。脚本がとても素敵だったことと、私が北海道出身なので函館という街にご縁も感じて、今回はすぐにやりますとお返事しました。

大高:僕はAzumiさんが演じられた“佐和”はとても難しい役だったんじゃないかと思いました。セリフがたくさんあるわけでもないし、顔も隠れがちであまり映らない。その中で存在感をスクリーンに出していく必要がある役ってすごく難しいなって。

Azumi:そうですね。確かに難しい役でしたけど、自分と全然違うからどうしよう?ということはなかったんです。やっぱり人は多面的であるし、色んな人格をもっているものだと思うので、自分の中の人格の一つを取り出せばいいというか。私自身、小学生の頃までは内向的だったりしたので、そこは佐和と一緒だなって思って。実際の私を知る人からは、「佐和とは真逆だね」って良く言われるんですけど(笑)

大高:そうなんですね(笑)。現場の反応はどうでしたか?

小林:Azumiさんはフィルムテストを見た時、とにかく収まり感がとてもよかったですね。僕は日常生活のキャラクターと、レンズを通したキャラクターってあまり関係ないと思ってるんです。でも例えば、普段どんなに好感度が高い人でも、フィルムに映ったときにそう見えない人って実は多くて。Azumiさんはその点がぴったりだと思いました。体を作ってきた人なんだなって。

Azumi:体を作ってきた?

小林:例えば伏せ目がちな仕草とか、自分で自分を俯瞰したイメージがちゃんと作られているかどうか。それがなくてカメラに映った感じがフィットしないと、いくら監督が頑張っても難しいんですよ。あと音楽をしてる人は、人のセリフを聞くのが上手だなって思いました。ちゃんと相手の話を聞いていて、会話のキャッチボールの基本がしっかりあると感じました。

Azumi:あぁ、確かに演奏とかそうですもんね。一番初めの撮影シーンが、“断崖絶壁のところで一人で写真を撮る”というシーンだったんですね。自分でも不思議なんですけど、その時からもう自然と佐和になっていたんです。それは多分、音楽と一緒で1曲のなかでその人に成りきる感覚に近いというか。ライブでも、例えば15曲歌うとしたら1曲1曲でどんどん人を変えて曲を表現していくということをずっとしていました。映画でもそういった“感情の構築”をすることがとても面白くて、「これはアルバム製作にそっくりだ!」って思いました。

大高:なるほど!それはとても面白いお話ですね。ミュージシャンの方がお芝居もやられる事も多いですが、総じてミュージシャンの方の演技は存在感があって驚く事が多いです。何か音楽活動とお芝居は繋がる部分が多いのかもしれませんね。

小林:古い話だけど、大島渚監督のキャスティングの極意「1にスター、2に歌い手、34がなくて、5に新劇」という言葉があったのですが、やっぱり歌手は勘がいいんだなと感じますね。布袋寅泰さんが映画「新・仁義なき戦い。」に出演したときには、大阪弁を音符にして覚え込んだらしくて、そういう体の作り方って、俳優だとなかなか出来ないですよね。

Azumi:ああ~わかる!

「函館珈琲」
「函館珈琲」

筆者紹介

大高健志(おおたか・たけし)のコラム

大高健志(おおたか・たけし)。国内最大級のクラウドファンディングサイトMotionGalleryを運営。
外資系コンサルティングファーム入社後、東京藝術大学大学院に進学し映画を専攻。映画製作を学ぶ中で、クリエィティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、2011年にMotionGalleryを立ち上げた。

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