コラム:LiLiCoのHappy eiga ダイニング - 第13回
2011年4月28日更新
第13回:井上真央、母の口癖は「調子に乗るな」
対談ゲスト:「八日目の蝉」井上真央
TBS「王様のブランチ」の映画コメンテーターとして人気のLiLiCoが、旬の俳優・女優から映画に対する思い、プライベートな素顔に至るまでを多角的に展開する対談連載「LiLiCoのhappy eiga ダイニング」。第13回のゲストは、「八日目の蝉」に主演の井上真央。角田光代の人気小説を成島出監督が映画化した同作で、複雑な生い立ちを背負った難役に挑み新境地を開拓した井上に、LiLiCoが迫った。
第2回中央公論文芸賞に輝いた同作は、父親の不倫相手に誘拐され育てられた恵理菜の数奇な運命を軸に描く。さらに、否応なしに背負わされた人生に向き合いながら、真実の愛とは、母性とは何かを模索する姿にも焦点を当てる。また、生後間もない恵理菜を誘拐した希和子永作博美が扮し、小池栄子、劇団ひとり、田中哲司、森口瑤子、風吹ジュンらが顔をそろえた。
LiLiCo(以下、リリコ):ビックリしました、本当に。素晴らしかったわ。見た後、腰抜かしてしまうほどだったもの。私の真央ちゃんが……。いいものを見せてくれて、ありがとう。
井上真央(以下、真央):うわあ、うれしい。こちらこそ、ありがとうございます。
リリコ:今までかわいい女の子の役が多かったじゃないですか。今まで見たことのない表情を見せてもらいました。しかも、この役はいろんな重いものを背負って生きているわけで、どういう風に受け止めて演じられたのですか?
真央:本当にチャレンジでしたね。作品にすごくひかれたので、どの役でもやりたいと思ってはいましたが、あえてこんなに難しい役を(笑)。(井上が演じた)恵理菜は、見えないものとの戦いのような感じがしていました。成島監督が、「裸になってぶつかってくれ」とおっしゃったので、これまで自分がつちかってきたものを全部捨てて、今の自分ができることをしようという思いでした。
リリコ:でもそれって、すぐに出来ました? 実際に取り組むとなると難しいでしょう?
真央:すぐには出来ないですね……。現場へ行く前に、気合を入れなきゃならない感じでしたし。今まで、本当に自由にやらせてもらっていたんだなということを実感しました。
リリコ:女優さんで難しい役をやると、撮了後もなかなか抜けないっていうじゃないですか。
真央:確かに、撮影が終わった日は抜けられない部分がありましたね。何が正解かもわからなかったし、今日のお芝居はあれで良かったんだろうか? と日々、悩んでいましたね。監督が納得されるまで何度も何度も繰り返しましたし、今日という1日が終わるのかっていうことを考えたことも多々ありました。
リリコ:成島監督、すごくこだわっていましたよね。
真央:「この作品に命をかけている!」くらいの意気込みだったので、私も「負けちゃいけない!」と思いましたね。
リリコ:演じていて難しかったシーンはどこですか?
真央:すべてです。撮影初日が、両親に「妊娠したのでお金を貸してください」と言うシーンだったんですけれど、感情も難しいなかでの撮影でしたから、「これからこの役と向き合っていくのかあ」と思うと、少しだけ気が遠くなったことを覚えています。あと、この作品のなかで唯一、希望を描いているシーンが小豆島でのロケ。監督も「あのラストがあってこその作品」だからということで、力を入れていらっしゃいました。そんなことも重なりあって、小豆島での撮影は、自分にとってすごく悩み抜いた日々でした。
リリコ:でも素晴らしかったから、悩んだかいがあったでしょう?
真央:いやいやいや。でも自分にとって、ひとつの経験として良かったと思います。まだまだだ! って己を知れた作品でしたし、いつもと違う感覚です。今も、まだどこかで、この恵理菜が受け入れられるのかな? これで良かったのかな? と思いますね。
リリコ:じゃあね、言っておきます。良かったんです!
真央:そう言っていただけるとうれしいです。
リリコ:この作品って母性を描いてもいるわけで、真央ちゃん自身のお母さんって、どんな方なんですか?
真央:肝っ玉母さん系ですね(笑)。子煩悩といえば子煩悩なんでしょうけれど、でも甘やかされず、厳しく育てられた気がします。けど、友だちのような感覚も強いかもしれませんね。友だち同士だからこそ言い合える関係ってあるじゃないですか、そんな感覚に近いかも。ケンカもしますけれど、今も仲良いですよ。
リリコ:どんなことでケンカをするの?
真央:ささいなことですよ。買ってきた服のサイズが合わなくて、「私はこんな大きなサイズじゃない! 人をどれだけ太っていると思っているの!」と怒られたり。だったら自分で買いに行けばいいのに(笑)。逆に小さいサイズを買ってきたら入らなくて、「こんなの入るはずがないじゃない!」って怒られてみたり(笑)。
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