コラム:韓国の人がぶっちゃける、made in KOREA - 第13回
2012年1月27日更新
シャッフルダンスの伝道師チャン・グンソク、国民的笑われ者を超え、最高の韓流スターへ
“中二病の笑われ者”――多数の人気ドラマに出演し、幼いころから知名度も抜群だったにもかかわらず、チャン・グンソクという俳優に対する韓国人のイメージはひどいものでした。「日本で“第2のヨン様”と言われるほど人気がある」という話を聞いたときには、本当に多くの国民が首をかしげたものです。
近年、芸能人もSNSやブログを運営することが増え、大衆との距離が縮まりつつある時代。しかしイメージが先行する芸能人の場合、うっかりするとネタにされ笑われ者になってしまうものです。韓国では、その標的として一番有名だったのが、ほかでもないチャン・グンソクでした。彼の書く日記は笑いのネタとして広まり、彼がどれだけ演技を頑張っても、根拠のない酷評を浴びせる人がほとんど。一度ついてしまったイメージは恐ろしく、日本での成功が報道されても韓国人は半信半疑でした。
そんな中、日本の“グンちゃんブーム”にのって、チャン・グンソクは韓国のトーク番組へゲストとして招待されました。MCをたじろがせるほどのハイテンション。衝撃的なシャッフルダンス。見ている人がスカッするほど正直なコメント。自信たっぷりな風ぼうでも失わない謙虚さと礼儀正しさ。同番組への出演は、彼の人生のターニングポイントとなり、これまで彼を批判してきた人々への強力なアッパーカットでした。
放送直後、彼に対する評価はガラリと変わり、「チャン・グンソクって、あんな人だったんだ」と騒然となったものです。今までどれほど大勢の人が、他人のことを知らずに批判してきたのかうかがえるコメントでした。彼がネットに書いて話題となった、真面目ともジョークとも取りがたい滑けいなコメントは、単なる格好つけではなく、「誰よりも正直で芸能人らしからぬ生き方」から生まれたものだった、ということが大衆に伝わったのです。
それまでは、評判の良かったドラマ「美男ですね」、話題を呼んだ秀作ドラマ「ベートーベン・ウィルス」でも批判されてきたチャン・グンソク。しかし、昨秋に公開された映画「きみはペット」では、誰ひとりとして文句をつける人はありませんでした。それどころか、「チャン・グンソクが本当にかわいかった」「チャン・グンソク以外に考えられない配役」と絶賛する人が多かったくらいです。放送開始が決定したドラマ「ラブレイン」への期待も大きいようで、相手役の「少女時代」ユナをうらやむ女性も少なくありません。
彼自身は何ひとつ変わっていないのに、イメージひとつでこんなに評価が変わるものなのかと驚くばかりです。同じ韓国人として感じることですが、韓国のネットユーザーも本当の価値観を見つけ出せるような温かく聡明な文化を育てていきたいものです。
しかし、日本で有名になって初めて本当の価値を理解してもらえたという事実は、おめでたい反面悲しいことでもあるのではないでしょうか。「イメージがよくない分、演技力で認めさせてやろうと思った」というチャン・グンソクの言葉通り、誰よりも真剣に演技に取り組んできただけあり、若いのにもかかわわらず高い演技力を持っています。トーク番組で見せたシャッフルダンスでイメージを一新した彼が、今後韓国でどのような快進撃を見せてくれるのか期待の1年です。