コラム:韓国の人がぶっちゃける、made in KOREA - 第11回
2011年11月25日更新
“優しい男”VS“悪い男”、究極の選択における勝者は?
今や韓国では当たり前のように使われる“悪い男”というワード。21世紀の韓国ドラマには欠かせないほど浸透していますが、韓国メディアでこの単語が多用されはじめたのは、間違いなくある映画がきっかけでした。
21世紀に突入して間もなく、韓国では1本の映画が大きな反響を呼びました。キム・ギドク監督の「悪い男」です。作品性の前に「見ていて決して愉快になれない」として、非常に多くの人から気持ち悪いと言われた作品でしたが、話題性は相当なものでした。女性の大半がその映画を嫌い非難の声を浴びせましたが、どこで間違えたかその不快感の塊のようなワードは、いつしか女性から絶大な支持を得た社会現象となったのです。
おそらく、映画公開後も“悪い男”というキーワードが注目され続け、バラエティや歌の歌詞で使われるなどいくつかのフィルターを通して、映画の不快感が拭い去られていったからなのでしょう。そしていつしか、“悪い男”=“魅力的で女性をいつでも捨てるタイプの男”と、人々に認識されるようになったのです。
今では、女性の口から「それでも私、悪い男が好きなの」というセリフを聞くことは珍しくありません。しかし、「身近にいる悪い男タイプは女に辛い思いをさせる」という現実に気づいた女性は、ドラマの中でのみ存在する「ヒロインだけを愛する悪い男」というファンタジーに溺れることになったのです。
“悪い男”がドラマの世界にはびこるワケです。
そして、“悪い男”が主役として引き立つために、引き立て役としてなくてはならないのは“優しい男”の存在。“優しい男”を散々振り回したあげく、「それでも私、悪い男が好きなの」と去ってしまうヒロインこそ、悪じゃないかと突っ込んでしまいたくもなりますが、それこそが多くの女性のニーズなのだから仕方ない。
今夏の人気ドラマ「ボスを守れ」で主役のチソンよりも、どちらかといえば“悪い男”ポジションであるジェジュンが多くの女性から人気を集めたのも当然のこと。
“悪い男”タイプが嫌いな私としては、「サブ主役ならジェジュンは当然優しい男役だろうな」という期待が外れてガッカリでしたが、結果的にはあれで良かったのでしょう。しかも、「あのまま東方神起の勢いに乗っていたら、韓国版キムタクになっていたであろう」と嘆かれるだけあって、ジェジュンの演技はアイドル出身としてはかなり出来の良いものだったからなおさらです。
しかし本来ならば、優しい男より悪い男を選ぶという韓国ラブコメの王道パターンが、悪い男より優しい男を選ぶという珍しいチャレンジを見せたこと、そしてまずまずの成績を収めたことは評価されて良いでしょう。
このドラマのヒットによって、今後ラブコメにおける“悪い男と優しい男”のポジションが変わってくる可能性も少なくありません。いずれは、“優しい男”時代がやってくるかも知れないのです。