十角館の殺人のドラマレビュー・感想・評価
ミステリでない。弱めのサスペンスホラー。
まずトリックが作中で一度否定されたモノを使う際にはそれを読者側がなんとか事前に予想出来るだけの根拠がなくてはならない。
それが作中犯人にだけわかる形で可能だった、みたいな話なら何でもありになっちゃう。
これはその何でもありトリックの最たる例だからミステリとしては20点。
犯人バラされた時には驚いたがトリックバラされたら拍子抜け。
演出とかは素晴らしかったし演技も皆頑張ってたし不快感のある映像とかではなくサクサク見ていける感じだったからそこは評価。
十角館の殺人ってタイトルだがトリックには十角館である意味が全く関係ない。
ある意味十角館がトリックに関わってるかも……!というミステリファン()の期待が一番のミスリードになる。
まあ作者はこの作品の中でも一貫してミステリファンというものを嫌ってるんだなというのがわかった。
なのに作者自身はミステリファンなんだろうなというのも透けてて自己嫌悪と他者と自分は違うという優越感を持ちたい自分との中で揺れながら作ってしまった作品なんだろうなと思った。
正直最初からトリック決めて描いたのではなくて作りながら書いて十角館と上手くトリックを絡められなくて取り敢えず終わらせた、ようにしか見えない。
所詮ミステリファンでしかない自分がミステリを書き始めてみて自分には書けない!所詮ミステリファンでしかない!ミステリファンなんてクソだ!という自己嫌悪がアドリブ的にあの結末に向かわせたように思う。
実写化不可能を突破するパワープレイ
原作を読んでいれば何故「実写化が不可能」なのかはハッキリしていて、そこを突破するためにあまりにも不自然で、こなすべき体裁を投げ捨てるというパワープレイをかましている…
と感じたのだけど、一緒に視聴していた人は特に分からなかったようなのでまぁその点は良かったのかもしれない。
多少フェアじゃないとは感じるものの、前髪など暗示するシーンを盛り込んでフェアネスに努める姿勢も感じられたのは良い点だった。
Anotherみたいなことにならなくて本当に良かったと思う。
原作からして、全体的にシャーロック・ホームズを彷彿とさせるどこか他人事かのような空気感をまとっていたので、江南が感情を出して嘆くシーンが意外と感じさせるものだった。
もう少し探偵役の2人に情緒的な要素を含めて、彼らも人よりも好奇心が強いだけでただの人であるという感覚が欲しかったとは思った。
守須から「踏み込み過ぎだ」と諌められたシーンもあるため、彼らがの行動原理がかなり奇抜目に映る、というのもあるとは思う。
色々言ってはいるけど、実写化としてはそれなりに無難~良作であると感じる。
実写化の難題を突破するためのパワープレイがある種ヒントにもなりうるなど、その効果も面白さがある。
一方で、原作読了済みであれば「難題解消」のギミックはすぐに見極められるので2話以降の視聴の必要は感じられないというミもフタもない気持ちもある。
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