アイアンハート
マーベルシネマティックユニバース(MCU)は今までの作品ほぼ(『エージェント・オブ・シールド』シーズン5以降、エージェント・カーターシーズン2以降、『インヒューマンズ』、『ランナウェイズ』、『クローク&ダガー』、『ヘルストローム』以外の『サンダーボルツ*』公開までの作品)観賞済。
『デアデビル: ボーン・アゲイン』、『サンダーボルツ*』を続けて見て、そのテーマ性が2025年を捉えていながらも1つの作品として素晴らしく、その流れで『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』で登場していたアイアンハートを主役に据えたこの作品も期待して見始めた。
そして最終話まで見終えた結果思ったのは、前二作から続く作品として引き続きカタルシスを得るような爽快な作品ではないものの、"アイアン"の名を継ぐ作品である納得感が得られる一貫したキャラクター性や今後が楽しみになる世界観の重なり、展開を描いていて個人的には結構好きな作品だった。
『ブラックパンサー ワカンダフォーエバー』で登場していたとは言え、ヒーローのオリジンを描く作品では切っては切れない説明尺が多く前半の3話までは正直かなりスローな展開に感じられた。
アニメでは"3話切り"って言葉があるくらい作品のテンポが良くないと離脱率が多くなることを知っていたからこそ(制作陣は原作ネタを知ってる前提で作ってないか…?もう少しテンポ早めた方がいいんじゃ…?)と不安に感じていたけれど、そんな不安が杞憂としてかき消えるほど4話から最終6話には舌を巻くくらい見事な構成で、後半の為の必要な3話だったと見終わって気付いた。
『アイアンマン3』でアイアンマンスーツを自動操縦させたりペッパーに装着させたように、今回サポートAIであるN.A.T.A.L.I.E.がアイアンハートスーツを装着することや、『アイアンマン1』で出てきたオバディア・ステインの息子のエゼキエル・ステインが出てくること、フッドことパーカー・ロビンスの全身に『アイアンマン2』でトニーが"パラジウム"の毒素に苦しんだ時に表れたような血管のような筋が表れる様など、この作品を考えると軽く思い浮かぶものだけでも『アイアンマン』シリーズを意識している要素が多く、リリのキャラクター性も相手の提示してきた課題を自分の解決方法で示していく創造力の部分であり頑固な部分、自分の作りたいものの為に手段を選ばない所は『アイアンマン1』でテロ組織に拉致される前のトニー・スタークにも近しい所を感じるし、NY決戦がきっかけで"アーマー依存症"に陥ったトニーのように継父と親友が銃撃に巻き込まれたことで"アーマー依存症"に陥ってたり、アルドリッチ・キリアンを図らずも見捨ててしまったことでヴィランを生んでしまったトニーのようにエゼキエルの試作品を落としてきてしまったことでエゼキエルをヴィランにしてしまったり、父親の作ったスターク・エキスポを使い新しいアークリアクターを作ったトニーと父親が作った車を使い新しいアーマーを作ったりと、あまりにもトニーの境遇や苦しみ、悩みをリリが再び歩んでいるように見えたし、そんなリリが最後にあの選択をしたのは『アベンジャーズ エンドゲーム』であの選択をしたトニーの気持ちが解るからこそ、(単純な善悪ではなく)あの選択も理解出来る上手い構成に感じられた。
また、リリが亡くなった友人のことが忘れられずAIとして蘇らせてしまう様は今も尚MCUフェーズ3までを幻肢痛の様に求め続けてる一部のファンのメタファーにも感じられたし、そういうファンは自分達の気持ちと近いからこそリリの最後の選択にも共感出来そう。
でも、個人的には自分が最近”終わること”に対して悲観的な気持ちばかり抱いていて、ナタリーがその「”終わること・終わったこと”に対して悲しいことを押し込めると楽しい思い出までも押し込めてしまう」って言葉がかなり刺さって、だからこそリリの母親が言ってたみたいに”人が恐怖を感じた時に戦うか逃げるか固まる”中で戦う必要があるし、リリが序盤で提示されたこと以外の解決策を模索してたシーンもあったからこそ、あそこであいつをブン殴って提案蹴って欲しかったな…。
トニーが『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で推し進めようとしていた"ソコヴィア協定"よりも、更にヒーローや正義を雁字搦めにするような作中のNYや現実社会の今、トニーと同じ道のりを辿っているリリが間違った道を歩んでいる今の状況は、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではキャップでしか止められなかったあの時の解決方法を、リリに対しては別の解決策を提示することで今の現実の状況も解決出来る、そんなもしかしたらの未来を見たい自分としては今回の展開は単純に一つの作品としても、今後の展開を考える上でも秀逸な作品だと思った。
これを観たくてDisney+に再入会しました
期待値までとはいかなかったけど、面白かったです
もっと、アクションが欲しかった