イクサガミのドラマレビュー・感想・評価
アクションは良いのですが、ストーリーは原作とは別物だと割り切った方が良いです。
※原作1~3巻の軽微なネタバレを含みます。
今村翔吾による同名小説をドラマ化した作品。
明治11年――刀が不要とされた時代に、約300名もの武芸者が集められ、莫大な報酬を賭けて命を懸けた戦いに挑む“武芸者デスゲームもの”です。
走りながらの斬り合い、高速のチャンバラなど、侍アクションは見ごたえ充分。特に5話の愁二郎 VS. 櫻で、武器を次々と持ち替えながら展開する攻防は、本作屈指の名シーンでした。
また、銀行や町並み、東海道の地図といったセットや細かな小道具も作り込まれており、テレビドラマでは難しい背景の造り込みも楽しめます。
しかし、ストーリーに関しては原作とは大きく異なり、割り切らないと楽しみにくいのが正直なところです。
尺の制約から、響陣・カムイコチャ・無骨・右京といった主人公以外の主要キャラは軒並みバックボーンがカット。原作で重要だった「武が価値を失った時代に、それでも戦う武芸者たちの生き様」というテーマは大部分が削られ、ドラマはより単純なデスゲームとして再構成されています。(4大財閥の人達がテンプレな悪役になっていたり、ルールを無視して勝手に粛清される見せしめの為だけの雑魚キャラなど、造りが雑ですね)
オリジナル要素が加えられている点も、必ずしも効果的とは言えません。
愁二郎が剣を抜けなくなる設定や、木札を10秒だけ外せるルールなど、序盤以降ほとんど活用されず、物語の核に結びついていない印象でした。
さらに残念なのは、京八流の奥義がすべてカットされたことです。
原作では、主人公兄弟が伝授された「北辰」「巨門」といった奥義が、ほぼ人外じみた能力として物語を牽引します。恐らく、漫画のような設定である事と映像の特殊効果が面倒といった理由でカットしたのだと思いますが、これにより、様々な奥義を出し合う兄弟同士の戦い、列車内で無骨を相手に繰り広げられる奥義を駆使した逆転劇――これらがごっそりと削られてしまったため、原作読者としては喪失感が非常に大きかったです。
シーズン1自体は一定の面白さがあったものの、期待していた兄弟戦や無骨との決闘が丸ごと省かれたこともあり、正直なところ続編への期待が見込めないシリーズでした。
