アドレセンス

アドレセンス
3.48
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採点

シリーズ紹介

13歳の少年ジェイミー・ミラーが同じ学校に通うある少女の命を奪った疑いで逮捕され、家族が崩壊していくさまを描いたヒューマンサスペンス。本作で俳優デビューを果たしたオーウェン・クーパーが主人公ジェイミー役を演じた。Netflixで配信中。

ジャンル:サスペンスドラマヒューマン

原題:Adolescence
製作国:イギリス

シリーズ

スタッフ・キャスト

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ドラマレビュー

4.52025年、大きな注目を集めた衝撃の配信ドラマ。

ガッキーさん
2025年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

驚く

大きな話題となったNetflixのドラマ。
全4話(約4時間)なので、ドラマシリーズとしては短編。

なんといっても注目なのは、この驚嘆のワンカット撮影。
お、長回しだな→え?まだ続くの?→まだ続くの⁉︎→(エンディング)→?!?!
という、ただただぶっ魂消るほか無かった。
しかも「第2話」のように追跡アクションや、ドローンの空中撮影のシーンまであるという。
いやはや、気が遠くなるほどの緻密なリハーサルが裏にあった事だろう。

監督は、「ボイリング・ポイント/沸騰」のフィリップ・バランティーニ。
あちらでも90分ワンカットという荒技を見事に成し遂げていた。
ちなみにそのキャストだったスティーブン・グレアムも本作に参加しており、なんと脚本も兼任している。

警察の事務的な手続き、ミランダ警告、弁護士を交えての家族への説明の対応、入念な身体検査、取り調べ、ネットの利用履歴など、
まるでドキュメンタリーのように非常にリアルに描写されており、
加えてワンカット手法のおかげで、尋常じゃない臨場感と緊迫感がある。
特に「第3話」は、ほぼ会話劇なので尚更である。

毎話に、「第1話」の冒頭の平和な日常が一気にガラガラと崩れ落ちる瞬間のような、
突発的でショッキングな展開が必ずあるため、一種のスリラー的な作品のテイストもある。

全4話という短さは結構だったが、いっそもっと長く見てみたいとすら思えるほど没入してしまった。

そして本作のテーマは、ある事件における、世間から見たら非難の対象とされて然るべきのような、加害者側にスポットを当てている点だ。
逆に被害者側はほとんど出ていない。

誹謗中傷にさらされる日常、
してもしきれないほどの後悔に押しつぶされそうになる、もはや崩壊寸前の最中、
それでも前を向いていこうと決意する、再生のドラマになっている。

「私は(ネタバレ)の姉だし」
「(ネタバレ)は私たちの家族よ。そうでしょ?」

この逞しい言葉には、見ていて思わず胸を撫で下ろした。

ラストのとあるシーンでは、
せめて今はぬいぐるみを代わりに。でもいつか、本人がこの場所に帰ってくるまで…という、一縷の願いが込められているような気がした。

子供も持つ親には、かなりヘビーな作品かもしれない。

父子の溝という普遍的な家族の問題と、SNS時代のネットいじめという現代的な社会問題、この普遍性と現代性の両方を見事に掛け合わせた一作。
だからこその、これだけの注目を集めたのだろう。

製作はブラッド・ピット。
このような傑作を手がけるプロデューサーとしても非常に優秀である。

ガッキー

5.0言葉にできない

kさん
2025年6月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:その他

ネトフリ世界一位というので観た。
全て1カット撮りということだが、その完成した作品を見ると「…まじか」の一言。特に3話ではこの子役の凄さを知る。
日本にまだこの作品の問題意識が芽生えていないため、他国と違いなかなか刺さっていないのだろうなと思うが、昨今のSNSを見ても多分に漏れず同様の問題を抱えている。
女性軽視、その暴力性だけでなく、現代の若者が直面する多種の問題について非常に考えせられる作品だった。

k

3.5男らしさの有害性

津次郎さん
2025年5月20日
PCから投稿

Andrew Tate以外に英国に問題はない──と言わしめたAndrew Tateとは元キックボクサーのインフルエンサー。2025/05/04時点のX上に1,076万人のフォロワーを有する。

男らしさ、男尊女卑、反フェミニズム、マッチョ的猛々しさを主義主張し推奨するウェブサイトやブログ、オンライン講座やメンバーシップコミュニティなどをManosphereと言うそうだが、Andrew Tateはそのイデオロギーを拡散させた主要人物とされている。

極右に立脚し女性蔑視者を自認し、信条に共鳴する者らや感化された信者たち、また男尊女卑の教義をもつアラブ宗教との親和性からも絶大な支持を得ている、そうだ。

いわば迷惑系インフルエンサーだが迷惑の規模と重度がちがう。
ガーディアン紙はAndrew Tateを名指しにしてジェイミー少年や同世代の少年に深刻な影響をあたえたと警笛を鳴らした。また英国議会でもとある議員がアドレセンスの学校上映を呼びかけたことをスターマー英首相も支持したという。

ドラマ、アドレセンスはManosphereに感化された少年をめぐり、その家族と学校と警察と心理学者らの対峙を描いた群像劇といえる。長回しの一発撮りで登場人物の動線で被写体が入れ替わる。公開されると演出脚本撮影演技が高く評価された。

評判通りのクオリティだった。
男にとってパソコンや端末はたんにポルノを見る装置でもある。ましてごく若いうちにパソコンを与えられ、インスタで煌びやかな人たちの世界を見て、Xに吐かれた罵詈雑言にいいねを押し、YouTubeやTikTokの自己顕示に慣れ、ありえないシチュエーションで性交しまくるポルノを見て育った人間がまともに成長すると思いますか。そこでManosphereが大々的に同志を募っていたら英国中にジェイミー少年が蔓延してもおかしくない。ジェイミー少年は氷山の一角なわけである。

しかし世界はリベラルが支配している。ジェイミー少年はありとあらゆるコンプライアンスの庇護下にある。一連の手続きにおいて不利な回答をしなくてもいいし、少年訓練センターに拘留され公判を待っている。
ふだん根性論にくそみそにするじぶんも、リベラルや人権やWOKEを察知すると心の奥底にいるトランプ大統領や戸塚ヨットスクールがふつふつと蘇ってくる。

注射が苦手とかホットチョコレートが好きとかなに言ってやがるんだこいつ。ひところしやがって、ぶっとばすぞ、このガキが。──という教育方法がいけないのは知っているが、率直に言ってしまうと、そういう気持ちになってしまうドラマだった。おそらく女性法医学心理学者との面談のE3が最大の山場だがその回がいちばんぶんなぐりたくなる。
同E3にはやたらベタつく刑務官がでてきて若い女性が職場で遭ってしまう疎ましい状況についても苦言を呈した回だった。

人間・人間社会にはある程度のパトリオティズムやファシズムが必要だと思う。ぜんぶ自由にしていい、ということなら、それなりにしかならない。

ところが父エディ(スティーブングラハム)は──
「あの子の年頃の時、よく親父になぐられた。ときにはベルトで、ぶちのめされた。おれは自分に誓ったんだ、じぶんの子には同じ事はしないと。じぶんの子には絶対にしないって。その誓いどおりおれはしなかったじゃないか。マシな親になりたかったんだ・・・。」
──と述懐して息子への過介入に萎縮しパソコンを買い与えた結果ジェイミーは部屋に入り浸るようになった。

結局誰が悪かったのか責められるあてが消去されていき、最終的にインターネットの有害性を浮き彫りにする見事な作品だった。が、見ていてとても疲れた。ワンショットといい、なんつうかドラマ自体にWOKE(意識高いんですよ僕らは)気配があって、やや鼻についた。

津次郎

3.0絵文字は英語でもemojiだった

2025年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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お喋りな啄木鳥
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