クイーンズ・ギャンビット

各所で絶賛された、配信ドラマのリミテッドシリーズ。(このシーズンで完結のドラマ)

チェスに魅入られた少女が、男社会の時代の中、並いる強敵たちを打ち負かし、
もっと上へ、もっと上へと歩みを進めていく。
勘のいい人は分かると思うが、非常に少年漫画的なストーリーである。
同時にダーティかつアダルティな要素も孕んでいる。

天才ゆえの孤独と苦しみ。才能と代償をテーマに、
女性が生きづらい男尊女卑の時代、依存症の恐ろしさ、
更には黒人差別、同性愛を匂わせる描写もあり、変に説教くさく描いていないのがまた絶妙だ。

また、二次性徴、思春期の生々しい描写を入れる事で、
あくまで一人の少女が大人になるまでを描いているところも面白い。

夢破れて去り行く者の姿も描いている所が切なく、
でもやっぱりチェスが大好きなんだと言う事を表すクライマックスが最高。

友情、仲間という、下手すると青臭くなりがちなテーマを、これだけ感動的に描いてみせているのは見事と言う他ない。

一見、淡々と黙ってチェス勝負をしているだけに思えるが、コトッ…コトッ…と、チェスを置く乾いた音が繰り返される中で、
その実は見えない応酬が連続し、凄まじい心理戦の火花を散らしている。

なお、恐らく懸念している人が多いと思れる、チェスのルールが分からないとついていけないのでは？という事に関して。

もちろん知っているに越したことはないが、結論から言って、全く問題ない。
チェスどころか将棋すらも知らない物知らずの小生が言うのだから間違いない。

人物の表情、チェスを動かす手の動き、そして音楽の演出で、
優勢なのか、劣勢なのかがちゃんと分かるようになっている。

ルックも抜群に格好良かったし、
寧ろ下手な映画以上に撮影のクオリティは高かった。

合計 約400分(6時間40分)の作品。

好評も頷ける。確かに面白かった。

格好良くて、洗練されていて、映像が細部まで美しく ずっと引き込まれる。
仕事から帰って来て1話から3話まで、翌日に4話から7話まで立て続けに観た。下調べせずに。
4K画質で。（8Kカメラで撮影したらしい、そんな放送や配信は多分無いハズなのに）未来に残すべき映像美を最初から考えていたのだろうか。

元はウォルター・テヴィス（ 1928年2月28日 - 1984年8月9日）の小説「 The Queen's Gambit 」(1983年)が原作で作者もチェス経験やアルコール中毒の経験があるらしい。
4年遅れて2024年にやっと鑑賞。
おそらく何十年先まで名作ヒューマンドラマとして扱われるであろう傑作だと思った。
ドラマのテーマはチェスではなくて、、、
コレは観て実感するべきで私は詳しく語らない事にします。

このNETFLIXドラマの影響で↓
①玩具メーカーのスピンマスターは、ドラマが公開されて以降、チェス関連の製品の売上が3桁増加したと発表
②EC企業のeBayは、チェスセットを含む関連製品の売上が215%増加したと発表
③チェス対局サイトのLichessは、公開日以降、1日のピーク時のプレーヤー数が大幅に増加していると発表
④同じくチェス対局サイトのChess.comでは、新規プレイヤーが5倍に増加
凄い。

個人的にアニャは童顔だと思う。すごい童顔だからメイク次第でいくつにも見せれる。ファッションに興味を持って 成長につれてお洒落に服装が変わって行くので そこも見所。装飾品や壁紙なども。
ラスト・ショットの服装がクイーン！
白のクイーンだ。ベスは昔のポーン（捨て駒）では無い。
しかし、ベスのその後の人生は？
とても気になるが、もちろんシーズン２は無い。原作は読んでいない。

リミテッドシリーズなので全7話で完結。1話約1時間。

チェスの天才エリザベス・ハーモン（アニャ・テイラー＝ジョイ）の栄光と挫折と再起を描いており、彼女にチェスを教えてくれたシャイベルさんや同じ孤児のジョリーン、チェス仲間たちも良い人なので爽やかな観賞感がある。最後も良い。

物語も面白く俳優も良いだけではなく、カメラワークや演出も凝ってて、映像的にも随所に見所がある。
特にチェスはテーブルの盤を挟んでプレイするので大きな動きがないが、ここも演出の上手さや展開の上手さで全く飽きさせないのがすごい。

登場するチェスプレイヤーは全員がキャラが立っていて、確実にそれが飽きさせない要因にもなっていると思う。
トーマス・サングスターが演じる天才チェスマスターが外見も生活スタイルもカッコ良くて最高。「チェス教えてあげるよ」って誘われたら普通ナンパだと思うよなと。