イカゲームのドラマレビュー・感想・評価
メッセージ性を理解することで少し胸糞悪くなくなる
人気があるというので見てみたが、描写はグロいし人間の嫌なところをたくさん見せつけられる胸糞悪いドラマだった。
ただ、社会問題に対するメッセージ性が強いドラマというのはわかりやすかったので、そのメッセージを理解することで、胸糞悪さを相対化すれば多少すっきりするかな?!と整理してみた。
少しすっきり。
以下は激しくネタバレです!!
描かれる問題たち
・ 格差
社会に存在する格差が多層に描かれる。
VIP・ゲーム主催者・スタッフ(内階級)・参加者(グループ内でできる階級)労働者、移民労働者、脱北者、年寄り・女性、NETFLIX・監督・視聴者…
ルールは厳しく不公平で、リストラ・借金、一度堕ちたらやり直せない社会になっている。
格差を乗り越えようとする者(ギフン)も結局はゲームのルールに自ら従う。(巨大システムへの絶望)
・ 民主主義・不公平
ゲーム運営は「民主」、「公平」を繰り返すが、フィジカルに強いものが有利なゲームや運によりスタート地点が異なるゲーム(型抜き)という不公平な環境で「公平」は救いがないという風刺。
また、民主主義は自分の利益を最大化した人々のために全体最適化されないシステムとして描かれる。
シーズン3のラストゲームでは民主主義の名の元に数の暴力がふるわれる。
・ 個の排除
かけがえのない人間が匿名化されてシステムに消費されている構造を批判していると考える。
仮面・個体番号と登場人物は個を排除されている。
弱者の人生は金持ちの道楽として消費される。
一方でVIPも仮面を被り個として扱われていない。
シーズン3のラストゲームに個として描かれなかった無名のおじさんをたくさん残すというドラマとして期待されない展開をあえてしているのは、社会問題はわかりやすい悪者ではなくルールに従う集団が作っていたりすることを伝える。
・ 少子化
少子化が日本よりも進み深刻な韓国。
殺伐としたドラマの中でも「子ども」だけは死なずそれなりの位置に収まるのがこのドラマの光であり監督の祈り。
ギフンの娘(貧困を乗り越える)、セビョクの弟(居場所を見つける)、ノウルの子(死んだはずだが生きている)ギョンソクの子(白血病を乗り越える)、ジュニの子(生き残らされる)。
ゲームでは子を切り捨てようとする存在も多くいる中で命に代えても守り抜こうとする存在が登場する。
根本問題が解決しないカタルシス不在のドラマだが未来への希望だけは残したかったのだろう。
・ 依存
ギャンブル(ギフン)・酒(VIP、フロントマン、チェ理事)、薬物(サノス、ナムギュ、ミンス)
人間性とお金
お金がないと人殺しもできるようになってしまう人間。
お金が多すぎると人殺しをさせることもできるようになってしまう人間。
南北問題
脱北者はシーズン通してフォーカスされる。VIPは西欧人。
西欧人の事情により朝鮮が南北に分断され同じ民族で殺しあうように仕向けられた歴史がわかりやすく再現されている。
メタ描写
「韓国の社会問題はあなたの国にもありますよね?」と問いかけるシーズン3ラスト
NETFLIXにお金を払ってイカゲームを楽しむ時間を持てている我々の中にもVIPがいるんだよというメッセージ。
シーズン1で飽き足らずシーズン2,3と作ってしまう監督とギフンの相似(正義?お金?馬でない証明のため?)