弁論をはじめます。のドラマレビュー・感想・評価

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採点

4.5黒歴史を隠蔽してはならないという訴え

estrellaさん
2025年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

説明とサムネイルは地味だし、1話目は韓国一の大手弁護士のエースである高飛車の女性弁護士が出てきてつまらなそうに見える。だがだんだん面白くなり一気に見終わった。
国選弁護士の実話のエッセイが原作の、社会派のドラマだ。映画やドラマの邦題のタイトルやジャンルやポスター写真に妙なのが多い。このドラマも日本での紹介の悪さのせいでせっかく面白い作品なのがわからないのが残念。

権力者の為の大手弁護士事務所のエース弁護士が、一時的に国選弁護士にまわされることになり、地方の貧しい弱者の小さい訴訟の弁護ばかりやらされるようになる。
本当は黒である犯罪者を白と言いくるめて権力で無罪を勝ち取ってきた冷酷な大手事務所弁護士が、泣き寝入りさせられてきた社会の片隅の弱者ばかりになり、だんだん変わっていく。その後思ってもなかった展開になっていく。

韓国では80年代がまだ終わってない。
全斗煥や朴正煕の軍事独裁時代に無実の罪で虐殺されたり拷問で殺されたりおかしくなった人達は多数いる。
過去の事だから忘れればいいだろ、拷問されたやつらは死んで当然、我々は愛国者だから国家の敵たる虫けらを踏み潰しただけ、とひらきなおり、口を拭って今は権力者や富豪になってる輩も多数いる。
加害者が亡くなったらそれでもう罪が終わりなのか?
冤罪で殺された人や人生をつぶされた人は汚名を返上する機会すらなく沈黙させられてきた。それを国民に訴える”弁論をはじめる”、というドラマだ。

80年代の黒歴史のトラウマをかかえている国で、また40年前をほうふつとさせる戒厳令が最近出てしまった。
だから韓国メディアも繰り返し自国の黒歴史を映画やドラマにして若い世代にも伝えようとしている。

その意気込みが非常に感じられるし、構成もよくおもしろい良い作品だった。
最終回は涙が出てしまった。
おすすめの映画。

本当の悪人は見た目に悪い人ではなく、一見おだやかでにこやかで社会福祉に貢献している良い人にいる、のを名優たちが演技で見せてくれたと思う。演技がうまいキム・サンホがでてきた時にこの役は重要人物なんだろうと思ってしまった。

「埋もれた心」「ソウルの春」など最近80年代の全斗煥独裁政権がらみのドラマや映画が多いなかでも、この作品は良い作品だと思う。

0.5ポイント減らした理由は、途中にネタばれてきなシーンがけっこうでてきて、私は数話見た時にもう殺人犯が誰かわかってしまった。この人とこの人がほんとは家族だろうなとか、この人はこういうつながりだろうな、という予想がある程度できてしまったこと。
そういうのは一切隠して最後に大どんでん返しにした方がよかったのではないかと思う。
また、最初のイントロの画像にもでてくるあの愛国者の時計が一体なんだったのか、をいわなかった。愛国者がもらえる時計、といってたから、多分南山で拷問してた輩が全斗煥から表彰された時にもらった時計なのかな?とおもった。

estrella
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