LOST シーズン6 : インタビュー
■マイケル・エマーソン(ベン)「ベンはろくでもない判断ばかり下している」
※多少ネタバレあり
――ベンジャミン・ライナス役でのエミー賞助演男優賞受賞(09年)、おめでとうございます。
「ありがとう」
――気球で島に不時着した「ヘンリー・ゲイル」として、数回だけ出演する予定だったんですよね。
「その通り。単なるゲスト出演のつもりでハワイにやってきたんだ」
――のちに、ヘンリー・ゲイルは「他のものたち」のリーダー、ベンジャミン・ライナスであることが発覚します。あなたの役柄が大きくなったのは、製作陣があなたの演技に感心したからでしょうか?
「どうしてキャラクター設定に変化が起きたのか、ぼく自身は知らないんだ。ただ、脚本家連中が強烈な悪役を登場させる予定だったのは確かだと思う。それで、既存のキャラクターを将来の悪役候補として試してみて、たまたまぼくがそのテストに合格したんじゃないかな。もし、ぼくが彼らのイメージと違った演技をしていたら、ヘンリー・ゲイルをさっさと殺して、新たな悪役を別の形で登場させていたと思うよ」
――ベンジャミン・ライナスは、偉大な悪役としてダース・ベイダーと並び称されるほどのイコンになっています。彼の魅力はなんだと思いますか?
「正直なところ、それがよく分からないんだ。他の悪役と違ってノーマルなルックスをしているし、話し方もいたって普通だ。ただ、常に曖昧さを残した言動をする。そのせいで、ぼく自身、ベンが何者かよく分からないくらいで(笑)」
――(笑)。
「自分でも分からないくらいだから、他人が彼に惹かれる理由なんて想像もできないよ。ただ、視聴者にとってベンジャミン・ライナスという存在が曖昧なパズルであるのは確かだね。頭脳派であり、策士であり、道徳観が著しく欠如している」
――同時に、使命感に突き動かされているように見えますよね。
「まったく同感だ。彼には崇高な目的があるように見える。それが何かは、自分にも分からないんだけど(笑)」
――シーズン6もすでに10話までの撮影が終わったそうですが、ベンジャミン・ライナスの目的は明かされましたか?
「いいや。実はこのシーズンはこれまで以上に複雑で、ややこしいんだ(笑)」
――本当ですか?
「シーズン6が始まるときには、深い霧がようやく晴れるように、結末までの道筋が姿を現すものだと期待していたんだ。でも、ぼくは間違っていた。これまで以上に複雑でややこしいんだ」
――ジェイコブを殺してしまったことで、ベンジャミン・ライナスに変化は起きましたか?
「いや、彼は簡単に変わるような人間じゃない。『LOST』の他のキャラクターは、成長したり、変化したりする。でも、ベンジャミンという男は基本的に変わらない。胸に秘めた戦略や目的はいつもずっと同じ。その目的はいまだに謎に包まれてるけど、とにかく彼はまだそれを目指している。ただ、彼を取り巻く状況は大きく変化した。いまや彼はリーダーではないから、人員も資金もない。だから、とにかく即興的にやりくりしている状態だ」
――これまでにベンジャミン・ライナスの過去がずいぶん明かされましたが、もっとも驚いたことはなんですか?
「驚かされることばかりだよ。ダーマ・イニシアチブの虐殺とか、彼が過去に行った凶行はぜんぶショッキングだ。現在においても、死体置き場でジョン・ロックに発砲したり、(傭兵の)キーミーの凶行を許してしまったり、ろくでもない判断ばかりを下している。でも、役者のぼくにはどうすることもできないから、せめて魅力的に映るように演技をしているつもりだよ」
(小西未来)