「ハイキュー!!」を知らない状態で「ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」がどのくらいのポテンシャルの作品なのか考えてみた【コラム/細野真宏の試写室日記】

2024年2月17日 07:00


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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


劇場版“FINALシリーズ”第1作目 「劇場版ハイキュー!!  ゴミ捨て場の決戦」が2024年2月16日(金)から公開されました。

私は「ハイキュー!!」については、タイトルと「確か少年ジャンプ系の作品?」というくらいの予備知識しかありませんでした。

本作の予告編は映画館で見たのですが、正直に言うと、サブタイトルの「ゴミ捨て場の決戦」という言葉には驚きました。

バレーボールを意味する「排球」通り、バレーボールが題材の作品なので「決戦」は分かりますが、なぜ「ゴミ捨て場」という“普通の人が引いてしまうようなワード”になるのか、と。

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これについては、試写を見てみると「理由」が分かりました。

本作では、バレーボールの「決戦」を描くのですが、サブタイトルの由来は、対戦する高校名にありました。

烏野(からすの)高校と、音駒(ねこま)高校との、年に1度の「全日本バレーボール高等学校選手権大会」における決戦を描いているのですが、「カラス」と「ネコ」という言葉が高校名にあります。

「カラス」と「ネコ」は、“ゴミ捨て場”で争う事もありますが、それを受け、「烏野(からすの)高校VS音駒(ねこま)高校」を「ゴミ捨て場の決戦」と表現しているようです。

この独特な表現は原作から用いられていて、さらに、このエピソードは人気なので、それを受け映画でも原作準拠のサブタイトルになったわけです。

そもそも「ハイキュー!!」の原作は「週刊少年ジャンプ」で2012年2月20日~2020年7月20日で連載され、単行本は全45巻となっています。

そしてアニメ化もされていて、2014年4月から第1期が放送され、2020年12月19日まで第4期が放送されていました。

今回の映画版は、まさにアニメ化の続きを描く形で制作され、 劇場版“FINALシリーズ”第1作目となっているように、映画2部作でFINALまで描き切るようです。

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ただ、本作で気になったのは、85分という上映時間の短さです。

これは、一般にバレーボールの試合時間が、3セットで終了する場合の目安は1時間~1時間半なので、「1試合分」というのが強調されています。

確かに「1試合分」をまるまる見せることができれば、臨場感を含めて成立するのかもしれません。

とは言え、映画であれば私のような一見さんもいるので、ある程度の導入も必要だと思いますが……その辺りはどうなっているのでしょう。

試写を見て率直に思ったのは、「これは一見さんだと本来の面白味が半減するタイプかも」ということでした。

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まず冒頭は、主人公の日向翔陽(ひなた・しょうよう)と、対決する孤爪研磨(こづめ・けんま)との出会いから始まります。

ここで、「主人公」という表現を使いましたが、映画を見ているだけだと、正直なところ誰が主人公なのかが分かりにくいという面があります。

良くも悪くも、「対決」ということでバランスよく描かれているのですが、予備知識がないと、どっちに感情移入したらいいのか分かりにくい状況に陥りやすいのです。

バレーボールは、本来は1点1点の動きがダイナミックで面白いので、それをアニメーションでさらにデフォルメして見せられる絶好な題材だと思います。

ところが本作では、試合中で回想シーンが頻発するので、バレーボールの臨場感は残念ながらフルで堪能しにくい面があります。

このような点を踏まえると、原作の33巻~37巻の5巻をかけて描いたものを85分で描く構想は無理があったのかもしれません。

ただ、ファンであれば、回想シーンも自動的に入り込むことができ、キャラクター目線で感情を揺さぶられることにもなり、満足度は一見さんと比べて大きく変わってくると思われます。

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以上の点から、本作は、ファン層がメインとなる作品だと想定されます。

では、そのファン層はどのくらい広いのか。これが本作の成否を分けることになると思います。

まず第1弾入場者特典「ハイキュー!! 33.5巻」ですが、こちらは200万部となっています。

同じく「週刊少年ジャンプ」連載の「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」(2021年8月6日公開)は興行収入34.3憶円を記録しましたが、この時の第1弾入場者特典の冊子は100万部でした。

つまり、製作委員会は「僕のヒーローアカデミア」の2倍はファン層の動員が見込めるといった試算です。

そして、それを裏付けるように、最速上映のチケットが全国的に争奪戦のような雰囲気で売れていました。

一方、現在公開中の「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」の第1弾入場者特典は400万部と、本作の2倍ですが、こちらは最速上映の動きがそれほど強くなかったように思えました。

それを考慮した上で、このコラムで書いたように、最終の興行収入は65億円くらいが目途になるという認識は未だに変わっていません。

そして、本作が異例なのは、「公開前の段階から入場者特典が第5弾まであると告知されている」ことです。

これはファン層への強いメッセージで、「ハイキュー!!」はコアファン層が通常の映画に比べて多い作品だと想定されます。

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このように考えると、「ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」は、「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」と同等の興行収入65億円くらいのポテンシャルがあるのかもしれません…!

子供向けの上映時間が短めな作品は映画館の回転率が良い面がありますが、一般向けで上映時間が短めな作品がヒットすると映画館にとっては望ましい状況となります。

果たして本作は特大ヒットし台風の目のような存在になれるかどうか。大いに注目したいと思います!

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