安部公房×石井岳龍「箱男」27年の時を経て“宿命の地”でワールドプレミア ベルリン国際映画祭に正式招待

2024年1月15日 20:00


第74回ベルリン国際映画祭(2月15日~2月25日)の「Berlinale Special(ベルリナーレ・スペシャル)」部門に正式招待
第74回ベルリン国際映画祭(2月15日~2月25日)の「Berlinale Special(ベルリナーレ・スペシャル)」部門に正式招待

安部公房氏の小説を石井岳龍監督の手によって映像化した映画「箱男」(2024年内公開)が、第74回ベルリン国際映画祭(2月15日~2月25日)の「Berlinale Special(ベルリナーレ・スペシャル)」部門に正式招待され、ワールドプレミアを迎えることがわかった。

箱男」は、日本を代表する作家・安部氏が1973年に発表した小説であり、代表作の一つとして知られている。「人間の自己の存在証明を放棄した先にあるものとは何か?」をテーマに、その幻惑的な手法と難解な内容のため、映像化が困難と言われていた。幾度かヨーロッパやハリウッドの著名な映画監督が映画化を試みたが、安部公房サイドから許諾が下りず、企画が立ち上がっては消えるなどを繰り返していた。

そんな中、最終的に安部氏本人から直接映画化を託されたのは「狂い咲きサンダーロード」で衝撃的なデビューを飾って以来、常にジャパン・インディ・シネマの最前線を駆け抜けてきた鬼才・石井岳龍(当時は石井聰亙)だった。97年に製作が決定。石井監督は万全の準備を期し、ドイツ・ハンブルグで撮影を行うべくドイツの地に降り立った。ところが不運にもクランクイン前日に、撮影が突如頓挫、撮影クルーやキャストは失意のまま帰国することとなり、幻の企画となったのだ。

あれから27年。奇しくも安部公房生誕100年にあたる2024年、映画化を諦めなかった石井監督は遂に「箱男」を実現させた。しかも宿命のドイツでワールドプレミアを迎えるという最高のシナリオだ。主演は27年前と同じ永瀬正敏。さらに永瀬と共に27年前も出演予定だった佐藤浩市、世界的に活躍する浅野忠信と日本最高峰の俳優陣が集結。数百人のオーディションで抜擢された白本彩奈も加わっている。


【「箱男」物語】

箱男――。それは人間が望む最終形態、すべてから完全に解き放たれた存在。ダンボールを頭からすっぽりと被り、都市を徘徊し、覗き窓から一方的に世界を覗き、ひたすら妄想をノートに記述する。カメラマンである“わたし”(永瀬正敏)は、街で偶然目にした箱男に心を奪われ、自らもダンボールをかぶり、のぞき窓を開け、遂にその一歩を踏み出すことに。しかし、本物の“箱男”になる道は険しく、数々の試練と危険が襲いかかる。“わたし”をつけ狙い“箱男”の存在を乗っ取ろうとするニセ医者(浅野忠信)、すべてを操り“箱男”を完全犯罪に利用しようと企む軍医(佐藤浩市) “わたし”を誘惑する謎の女・葉子(白本彩奈)……。果たして“わたし”は本物の“箱男”になれるのか。


石井監督、キャスト陣、ベルリン国際映画祭のアーティスティック・ディレクター、カルロ・シャトリアン氏のコメントは、以下の通り。

石井岳龍(監督・脚本)】

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原作者安部公房さんにお会いして映画化権をいただいたのが32年前、ドイツとの合作でクランクイン前日に中止になったのが27年前、それから数度の成立挫折を経て、映画『箱男』は遂に完成間近、ベルリン映画祭でお披露目できることになりました。ここまでの長い間、この作品にご尽力をいただいた多数の関係者の皆様に改めて深く感謝を致します。ずっと待っていてくれた永瀬さんはじめ、非常に優れた俳優、スタッフたちと、アクチュアルな映画表現の可能性を追究しました。世界中の映画観客に、この挑戦的な映画を堪能していただきたいと願っています。

永瀬正敏

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27年前、ドイツ・ハンブルグでクランクイン直前に、志し半ばでほぼ切れかけた“思いの糸”が、こうして紡がれた事が何より嬉しいです。そして再びドイツの地、ベルリン国際映画祭に特別招待していただけた事、大変光栄ですし、ある意味奇跡です。

石井岳龍監督の『箱男』に対しての壮大なるロマンと“思いの糸”の強さが、世界中の沢山の方々の心の中に共鳴する事を願うばかりです。

浅野忠信

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ベルリン国際映画祭招待決定!とても嬉しいです!

箱男』ではとてもやり甲斐のある役を徹底的に楽しんで演じられたのでドイツでどう観てもらえるのか今から楽しみです!

佐藤浩市

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ベルリン映画祭の『箱男』招待には感謝と同時にある感慨があります。

石井監督の『箱男』は27年前にドイツでインする筈が諸般の事情で頓挫し、クランクイン直前に彼の地を後にすることになった作品だからです。

時を経て新しく創られた『箱男』がドイツベルリンに呼ばれる。

27年前とは多少形を変えた作品とはいえ,箱の中からの『箱男』の目線は当時も今も変わりません。

白本彩奈

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この作品が構想30数年だと聞いたときは、その背景と、私にとって挑戦的な役であることも相まって正直戸惑いました。それでも決断と覚悟の先に、葉子という大切な役を頂けた瞬間は今でも忘れません。それから、作品と役について、頭から指の先までうんと考えた毎日は、私にとってすごく愛おしい時間となりました。沢山の方の想いが込められた『箱男』チームの仲間に温かく迎え入れていただけたこと、心から感謝しています。私自身がミックスであることで、子供の頃から、お芝居と作品を通して世界の架け橋となることが目標でした。そんな中、ベルリン国際映画祭にお招きいただいたことは大変喜ばしく、同時に高揚感に包まれています。全ては誰よりもエネルギーを帯びてそこにいて下さった監督とチームの結晶であり、改めてその一員となれたことを本当に誇りに思います。今は、ただただ皆さんの目にどのように受け取っていただけるのか、楽しみです。

【カルロ・シャトリアン(ベルリン国際映画祭 アーティスティック・ディレクター)】

石井岳龍監督の新たなストーリーテリングを追求し続ける姿勢に感銘を受けました。我々が暮らす社会のクレイジーさを、クレイジーなビジュアルで表現し、ユーモアのセンスを決して失うことなく、この世界に批判の目を向ける手法が未だ健在であることも嬉しく思いました。

多文化で、大胆不敵な作品を好むベルリン国際映画祭に『箱男』は非常に合うと感じており、ぜひ正式招待したいと考えました。

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